導入事例

2021.09.13
SCSKサービスウェア株式会社

約40%の人件費削減に成功!新型コロナワクチンの予診票を全自動でデータ化

SCSKサービスウェア株式会社
対象帳票
新型コロナワクチンの予診票
before
  • オペレーター(データ入力担当者)が手作業で入力していた
  • 業務の平準化が難しく、コスト増加
after
  • 入力から出力まで全自動
  • AI-OCRを併用することで人件費が約40%削減

ITサービスの総合力を強みにもつ大手システムインテグレーター、SCSKグループでBPO事業を手掛けるSCSKサービスウェア株式会社。同社では、新型コロナワクチンにおける予診票のデータ化業務に、AI-OCR「DX Suite」をオンプレミス環境で活用するため、エッジコンピューティング「AI inside Cube」を導入しています。そのプロジェクト全体の工夫や効果を伺いました。

BPO事業を手掛けて40年のSCSKサービスウェア株式会社

ーー 事業内容をお聞かせください。

水野さま:弊社はITに関するさまざまなサービスを提供しているSCSKグループの中で、主にコンタクトセンターやバックオフィス業務などのBPOサービスを提供しています。私たちが勤務する名古屋センターでは、40年近く前からバックオフィス業務やデータ入力業務を中心にサービス提供してきました。さまざまな種類の紙帳票をお客様からお預かりし、多い時期で10社以上のデータ入力をオペレーター(データ入力担当者)が行なっています。

人材採用の課題と市場の変化からデジタル化を推進

ーー 入力業務のデジタル化はどのような背景から進められたのでしょうか。

水野さま:高齢化が進み、今後ますます労働人口が減少していくことは弊社にとっても大きな課題であると認識しています。データ入力は、いわゆる労働集約型のビジネスであるため、その担い手であるオペレーターが減少することは予想できていました。入力業務はそのビジネスモデル上、いかにコストを抑え、かつ早く正確にデータ入力ができるオペレーターを確保するかが非常に重要になってきます。しかし、最近では入力スピードが速い人材の確保は、人件費の面から非常に難しい状況となっていました。また、ペーパーレス化によって、データ入力案件そのものが少なくなってきているという市場の変化も、デジタル化を推進する要因でした。

手書き文字の読取精度の高さからDX Suite を選定

ーー さまざまなOCRがある中で、DX Suite を採用された理由をお聞かせください。

水野さま:お客様からご依頼いただく帳票のほとんどが手書きであるため、手書き文字をより正確に読み取れるツールを求めていました。OCRは昔からありますが、活字の読み取りを前提としたものばかりで手書き文字に対応していませんでした。実際にさまざまなツールを検証してきましたが、どれも手書き文字の読取精度が低い印象を受けました。DX Suite が手書き文字にも対応していると聞き、さっそく試してみたところ、想定していた以上に手書き文字の読取精度が高かったことがきっかけで導入を決定しました。その後、数社の民間企業様の業務で会員申込書といった帳票のデータ化業務で活用しています。新型コロナウイルスが感染拡大しはじめた2020年6月頃には、自治体様の定額給付金に関わる申請書類のデータ化業務にも活用しています。

AI inside Cube でセキュリティも安心

ーー 今回、新たにAI inside Cube を活用された業務についてお聞かせください。

水野さま:新型コロナワクチン予診票のデータ化業務で活用しました。ここでいう予診票とは、ワクチン接種当日の健康状態を記入し、接種後には接種券を貼り付ける書類のことで、ワクチン接種を終えた個人情報を管理しています。最初にご相談をいただいたのは2021年の年明け頃で、3月頃から業務設計や要件定義を本格化させました。6月下旬には接種券や予診票の発送を開始するスケジュールであったため、5月のゴールデンウィーク明けからは業務を立ち上げられるように進めました。

ーー AI inside Cube を採用された理由をお聞かせください。

水野さま:DX Suite がインストールされたAI inside Cube を採用したのは、非常に高いセキュリティが求められる業務であるためです。予診票には氏名、住所、生年月日、基礎疾患の有無など、取り扱いには厳重な注意が必要となる情報が記載されています。そのため、独立したセキュアな環境でデータ化を行なう必要がありました。また、データの送受信用に回線の帯域も確保したかったことも採用した理由の一つです。自治体様の定額給付金の業務ですでにAI inside Cube を導入していたので、扱いには慣れていたこともメリットでしたね。

一ヶ月で最大40万枚の帳票をデータ化

ーー 今回は何パターンの帳票定義をされたのでしょうか。

森さま:予診票は一般住民向けと医療従事者向けで微妙にフォーマットが違うため、2パターンの帳票定義をしました。

ーー 紙の予診票を読み取り、データを納品するまでの業務フローをお聞かせください。

寺本さま:自治体様から送られてきた紙の予診票をデータ化し、納品するまでにおおよそ1週間となっています。以下がその大まかなフローです。

①  接種を受けた方の紙の予診票を、郵送で自治体様を通じて受領

②  予診票に不備がないか目視で仕分けし、スキャニングして画像化(名古屋センター)

③-1 DX Suite で読み取り、データ化(名古屋センター)

③-2 40名弱のオペレーターが画像を見ながら入力し、データ化(沖縄センター)

④  DX Suite の読取結果とオペレーターの入力結果を突合し、一致しなかったデータはオペレーターが再度入力・修正(沖縄センター)

⑤  データを納品用に加工し、CSV形式で納品(名古屋センター)

ーー 月間の読取枚数を教えてください。

寺本さま:最大で40万枚で、一日あたり1万3,000件を超えているため、非常に大規模だと認識しています。

APIを活用し、一連の業務の全自動化を実現

ーー 一連の業務フローで工夫された点をお聞かせください。

水野さま:APIを活用し、DX Suite へのアップロード(スキャナーで読み取った帳票が自動でDX Suite に送信される)から、テキスト化されたデータのダウンロードまで、一連の業務が自動化される仕組みを作りました。また、接種現場で人が手で貼るシールはズレが生じ、枠に収まらないと読取精度が低くなってしまうため、予診票の右上に貼られた接種券シールを別の画像として切り出し、自社で開発したツールでシールの画像に傾きを調整するなどの加工処理を施しています。スキャンした画像をDX Suite に送信する前にそのツールで画像を切り取るため、DX Suite には、予診票の画像と接種券シールがそれぞれアップロードされるかたちになります。

ーー 弊社からのサポートはありましたか。

森さま:はい、AI inside のカスタマーサクセスのご担当者様にサポートいただきました。例えばデータ加工の設定方法に関して、「帳票設定の際は、枠の線を含めたほうが良いのか」「読み取れなかった場合の設定はどうすれば良いのか」など、さまざまな場面でマニュアル以上のアドバイスをいただき、非常に助かりました。

約40%の人件費削減に成功!入力+確認の2名体制が1名に

ーー 今回のお取り組みにおける定量的な成果をお聞かせください。

水野さま:今回の取組はまだ始まったばかりなので、あくまで2021年7月現在の数字になりますが、以前は一枚の帳票に対し入力担当とチェック担当の2名が稼働していたため、人的リソースだけに焦点を当てると、約40%のコストを削減することができています。全体的なコストでは、8〜9%ほど削減できました。

近野さま:沖縄センターでの入力以外のフローは、入力から出力まで人の手が介在しない、全自動となっているため、夜間でも休日でも動き続けており、短いリードタイムによるデータ化に成功しています。

ーー DX Suite の読取精度はいかがでしたか。

小田さま:予診票の読取精度は、約95%が手入力の内容と一致しており、非常に高い精度であったと思います。残りの5%だけはオペレーターの手作業で確認、修正しています。

BPO事業のDXで、縁の下から社会に貢献する

ーー 今後のDXについての展望をお聞かせください。

水野さま:DXを進めてはいますが、まだまだコストとリソース削減は目標値には達していません。業務全体をより効率化していくためにも、人の入力そのものをAI-OCRにすべて置き換えていく必要があると考えています。AI inside には、人が入力する以上に信頼できる精度向上や機能追加をお願いしたいですね。それが定量的な情報として可視化できれば、人のチェックや監視、検査が必要なくなってくるはずです。

ーー 最後に、今回のお取り組みに対する感想をお聞かせください。

水野さま:我々のBPO事業そのものは世の中でも認知されにくい、縁の下の力のような存在です。しかし、この未曾有のコロナ禍で、一般の方の生活に直接影響するような事業に携わらせていただけることは、非常にやりがいを感じます。会社の方向性として、こうしたデジタル化、DXを社会貢献と考えて引き続き取り組んでいきたいですね。

さぁ、データ活用を始めよう。
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