導入事例

2021.03.26
横浜市役所

2ヶ月で500時間削減に成功、更なる業務改革へ。AI-OCRは「アナログとデジタルの橋渡し役」

横浜市役所
  • 会社名
    横浜市役所
  • 業界
    自治体
対象帳票
給付認定申請書, 就労証明書
before
  • 17,000件の申請書を人の手で処理していた
  • 2ヶ月で処理する必要があるため膨大なリソースが割かれていた
after
  • 業務時間を全体で500時間削減
  • デジタル化したことで各区役所から申請情報が閲覧可能に!

全国で最も多い人口を抱える政令指定都市である横浜市。紙が多く存在する行政手続の中で業務オペレーションの効率化を実現するため、オンプレミス版AI-OCR「AI inside Cube」を活用した実証実験を実施。その効果と今後の展望を伺いました。

2ヶ月で17,000件を人の手で処理

岡崎さま:私たちが所属する課では事務処理集中センターを開設し、保育所を利用される方の入所選考や、保育所を利用するための給付を受ける資格を保護者の方が有しているかどうかを審査する認定業務を行なっています。

竹森さま:保護者の方から送付される申請書類を精査し、制度に則って適切に保育所の利用決定をしています。申請書を適正に処理し、1人でも多くの児童を保育所に入所できるようにするため、短期間に送られてくる大量の書類をミスなく正確に、そして迅速に処理することが求められています。横浜市には18の行政区があり、通常は区役所で保育所入所事務を行っていますが、4月入所についてはそれらすべての区から申請に関する業務を一手に引き受けています。全国の政令指定都市の中で最も人口が多いため、最も多くの申請を処理しているといっても過言ではありません。

岡崎さま:毎年、保育所への4月入所の申請は17,000件ほどあり、給付認定申請書や就労証明書が必要になるため、1件の申請に最低でも3〜4枚の書類が送付されます。10月下旬に申請が始まり、認定結果の通知が1月下旬となるため、10月〜12月の間に処理する必要があります。申請の締め切りである11月は申請が集中するため、一日で3,000件届くことも……。


業務量がパンクする危機感からデジタル化を検討

岡崎さま:横浜市の職員およそ20名が申請に関する業務を行なうのですが、申請期間中は超過勤務が常態化しているという課題がありました。申請内容を受付簿という申請リストに記録していく必要があるのですが、担当職員だけでは処理が追いつかず、他部署から応援を呼んでいました。

竹森さま:また、入力業務のために派遣スタッフを80名以上採用し、朝から夕方までひっきりなしに対応していたこともあり、人件費等のコストも大きくなっていたのです。郵送で届く申請書類を開封し、PCへ手入力した後、目視でチェックするという流れであったため、このままではいつか業務量がパンクしてしまうという危機感から当時の課長主導のもとデジタル化の検討が始まりました。

オンプレミス版AI-OCRでセキュリティ完備

竹森さま:AI-OCRの実証実験は、オンプレミス版AI-OCR「AI inside Cube」を3台利用した導入となりました。その背景として、保育関連の事務業務ではセンシティブな個人情報を取り扱うため、セキュリティ基準が厳しくなっています。そうした条件下で、地方公共団体だけが使用しているネットワーク「LGWAN(総合行政ネットワーク)」を活用した「NaNaTsu AI-OCR with DX Suite」がNTTデータさんから提供されていることを知りました。ただ、NaNaTsu AI-OCR with DX Suite はセキュリティは満たしますが、横浜市では短期間に大量の帳票を処理できる性能を満たす必要があったため、最終的にセキュアで高性能な「AI inside Cube」で実証実験をすることとなりました。

岡崎さま:他社サービスとの比較検討の要素で最も重要であったのがセキュリティポリシーと合致していることです。その他にも、読取精度が求めている基準を満たしているかどうかも検討要素の一つでした。

検証のポイントは実務で導入すること

竹森さま:実証実験は「Stage1」と「Stage2」に分けて実施しました。

▼Stage1:AI-OCRとRPAが活用できるかを検証
竹森さま:2020年5〜7月で実施した「Stage1」では、AI-OCRとRPAのWinActorを組み合わせて、認定業務に活用できるかを検証することが目的でした。200〜300件のダミーデータを使い、実際の認定業務と同様に処理し、読取速度や正確性、現場での使いやすさを確認しています。実際の申請書は手書き文字で記入されているため、あえて読みにくい文字で試したところ、求めていた以上の読取精度の高さを発揮してくれました。当初、精度は90%以上と聞いていたのですが、検証を通じてみると95%ぐらいの感覚でしたね。

▼Stage2:一部の区に絞り、実際の業務に適用できるかを検証
竹森さま:横浜市にある18の行政区のうち、一部の区に対象を絞り、保育所の認定業務に適用できるかを検証しました。期間は10月〜12月までです。実務での運用を試したからこそわかったことがいくつかありました。例えば、AI-OCRの読取結果をチェックする工程が必要であるということです。読取精度は95%という非常に高い数値だったのですが、裏を返せば一枚の帳票の中で一項目は読み間違いをする可能性があるということ。このチェック業務には、想定していたよりも工数がかかりましたね。ただ、人の手で入力を行なうより断然早いので導入を決めました。

500時間の業務時間削減!デジタル化で想定外の成果も

竹森さま:AI-OCRとRPAの活用で、受付簿の作成業務はすべて自動化できました。全職員分で500時間の稼働時間が削減され、もちろん他部署からの応援を呼ぶ必要もありません。また、実際にDX Suite を使っている派遣スタッフがスムーズに使いこなせていたことも印象的でした。派遣スタッフは、普段あまりPCに触れない方も珍しくありません。しかし、DX Suite はシンプルで簡単なUIであったため、一度説明するだけで覚えてもらえたことも良かったです。そして、想定外の成果もありました。申請書類をデータ化したことによって、横浜市にあるそれぞれの区役所からオンラインで申請情報を確認できるようになったのです。4月入所における認定業務は市役所で一括して行なっていますが、申請情報に関する問い合わせはそれぞれの区役所で対応することになっています。そのため、紙のままで処理していた頃は、申請情報を確認するために区役所と市役所間で電話でのやり取りが発生し、そこでタイムラグが生じていました。

岡崎さま:今回の実証実験で、区役所から共有フォルダ経由で受付簿にアクセスし、申請書類のPDFを確認できるようになったのです。これは本当に画期的なことで、区役所からも便利になったとの声がありました。

AI-OCRは「アナログとデジタルの橋渡し役」

竹森さま:検証結果を受けて、2021年度は、4月入所に向けた保育所認定事務において、AI-OCRとRPAを本格導入します。今回の検証規模と比較して、およそ9〜10倍にスケールアップするため、かなり大きなチャレンジとなりますね。ただ、スケールさせることによって根本的な業務効率化を実現できると思うので、いち早くシステムを安定軌道に乗せていきたいです。

岡崎さま:長期的な展望では、今まさに全国の自治体でシステムの標準化とデジタル化が方針として打ち出されており、横浜市でも住民からの申請〜住民への通知までをデジタルで完結するような、デジタルファーストを目指していきます。

竹森さま:一方で、行政サービスは“あまねく公平に”提供されなければなりません。最終的な事務業務をすべてデジタルでやっていくとしても、デジタルディバイド(情報格差)によってインターネットに抵抗のある方でも行政サービスがしっかり受けられるべきです。そのためにも、紙の業務をなくすわけにはいかないのでAI-OCRには「アナログとデジタルの橋渡し役」としての重要な役割を担ってもらいたいと考えています。

※課名、補職は令和2年度(2020年度)のものです。

さぁ、データ活用を始めよう。
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