導入事例

2019.06.04
三菱地所株式会社

業界のトップランナーが描く、働き方改革とその先のビジョン

三菱地所株式会社
  • 会社名
    三菱地所株式会社
  • 業界
    建設・不動産
対象帳票
賃貸住宅申込書, 土地情報資料等

昭和、平成を通じて数多くの大規模不動産開発を行い、総合不動産会社として業界をけん引してきた三菱地所株式会社。AI-OCR「DX Suite」を導入し三菱地所グループ全体での働き方改革を目指す実態に迫ります。

ミッションは「先進的なITテクノロジーを用いて、社員が定型業務から解放され、最高のパフォーマンスを発揮できるようにする」こと。不動産業界をけん引するトップランナーが描くビジョンとは⁉

はじめに御社の事業内容について教えてください。

(石井)三菱地所はマンションやホテル、商業施設やオフィスなど、不動産の開発から運営管理までを行う総合不動産デベロッパーです。その成り立ちは古く、1890年に東京・丸の内の土地の払い下げを明治政府から受けたことに端を発します。その後、1937年に会社を設立し、以来、主戦場である丸の内地区を中心に、国内外の様々なエリアにおいて不動産開発事業を行ってまいりました。
基本使命は「私たちは街づくりを通じて社会に貢献します」というもの。街に住む人、働く人、遊ぶ人、憩う人、それぞれに必要なサービスや空間があります。その本質的な価値を考え、真に価値ある社会を実現するチャレンジを続けている会社です。お客様のさまざまなライフシーンを豊かにする街づくりをミッションにしています。

OCR導入検討に至った背景をお聞かせください。

(石井)DX Suite の導入にあたっては、三菱地所グループのIT全般を統括するDX推進部と、グループ全体のIT導入推進に関する戦略的ITグループ会社であるメック情報開発株式会社が主導で進めてまいりました。
ミッションは「先進的なITテクノロジーを用いて、社員が定型業務から解放され、最高のパフォーマンスを発揮できるようにする」こと。そのためには、業務効率化に直結するようなITテクノロジーを「まずは使ってみる」というスタンスでいました。
その流れの中で、まずRPA(Robotic Process Automation)の導入を推進することにしました。
RPAを利用している事業の現場ユーザーとコミュニケーションを取る中で、導入効果を最大限に発揮するためには高性能なOCR製品との連携ニーズの高さを感じたのがOCR検討のきっかけです。
不動産業界は、申込書や契約書など、未だに紙文化が根強く残るアナログな業界なので、デジタルテキスト化されていない文書が大量にあります。
それらをデジタル化して、RPAと組み合わせて業務効率化を図るためにもOCRの導入は必然的な流れでした。
このような背景から、RPA連携が可能で業務効率化につながる高精度なOCRを導入検討することになりました。

AI-OCR「DX Suite」を導入いただくことになった経緯をお聞かせください

(櫻井)画像解析の技術が世の中的に浸透していくなかで、その技術を使って手書き文字の読取りができるソリューションがあるのではないか、またそのようなポテンシャルがあるソリューションがないか探していたところ、インターネット上でAI inside を見つけたことがDX Suite を知った最初にきっかけです。さらに、ホームページを拝見し手書き文字の読取りに関する実例があったため「これは精度が高いのではないか?」と感じ、話を聞いてみたいとお問い合わせをしました。

導入決定にあたってはOCRを手がけているいくつかの企業様に声をかけて比較検討をしています。そのなかでDX Suite の決め手となったのは読取り精度とプロダクトの柔軟性でした。
まず、精度については紙の文化が根強く残っているからこそ、何よりも精度が重要だと考えていました。
精度の低いものだとその分、確認や修正の手間が生じますから、それでは意味がありません。様々な製品を比較検討をした結果、手書き文字読取り精度が低い企業様が多数を占めるなかで、もっとも精度が高かったのがDX Suite でした。
実際にお話をうかがってみると、API連携や画面上での操作感など、システムに柔軟性も備えていることも選定にあたってのポイントとなりました。さらに、AI inside は営業ご担当者のサポートも手厚く、画像認識技術に特化し、主力製品がAI-OCRであったことから「この技術で勝負する!」という気概を感じたことも大きかったですね。

DX Suite を導入後、仕事内容における変化はありましたか?

(櫻井)2018年の12月にグループ各社にアナウンスしたばかりなので、運用がはじまるのはこれからとなります。なので、現時点(※2019年2月現在)では、まだ効果測定などはできていません。運用はこれからですが、すでにグループ会社の中でAI-OCRありきの運用見直しに入った会社も多数ありました。
グループ会社の中には、使い方を説明した段階で「このような機能があるのであれば、この業務の運用が変えられるから業務見直し定例会をやろう」といったように、導入をきっかけとして社内の業務効率化を目指し、現場が自発的に業務プロセスを見直すという動きが出てきています。そういったグループ会社に対して、DX Suite の機能を詳細説明しながら業務改善に向けてどんなことができるのか、ということを一緒にディスカッションしている段階ですね。やはりRPAにしろ、OCRにしろ、導入するにはコストがかかるものですから、コスト以上の削減効果は期待しています。三菱地所としても、それらのシステムの導入が目的ではなく、業務効率化の一手段にしかすぎないわけです。これらのツールを導入することで、現場で働く人たちが自分たちの業務を棚卸しして、有効に使うためにどうすればいいかを考えながら業務改善を図るきっかけになってほしいと思っています。そのためにも、こういった取組みを発信して、現場と一緒に業務改善を促していくことが大切なのではないでしょうか。そういうふうに考えると、AI-OCRやRPAを導入したことで、現場のITテクノロジーに対する姿勢が変わったのではないか、と感じることもありますね。従来の仕事内容を見直して、「こういうことができないか?」という意見も上がってきます。私たち自身、現場の困りごとなどは完全に理解しているわけではないので、そういった部分の相乗効果は表れています。これから浸透していったときが楽しみですね。
もちろん定量的な効果の側面でも、お客様や現場のスタッフが手で記入した書類を事務スタッフが目で見てシステムに入力するという業務においては、AI-OCRを使うことで圧倒的に業務が効率化されると思っているので、運用はこれからですが効果を期待しています。グループ会社の中でも想定効果を算出したうえで、十分に効果が見込めるという声もでてきております。業務効率化だけでなくAI-OCRを使ってデジタルデータに変換することで、データ活用という点でAI-OCR利用の幅が広がっていくと思うのでそういった点でもDX Suite には期待をしています。

三菱地所が取組んでいる働き方改革について教えてください

(石井)現中長期経営計画では「時代の変化を先取るスピードで、競争力あふれる企業グループに変革する」というミッションを掲げています。既存ビジネスの強化と新規ビジネスの創出という両輪を進めていくことで、ビジネスモデル革新を起こすことが我々の目標です。ビジネスモデル革新のためには、まず価値創造に費やせる時間を創出する必要があります。つまり、目の前の仕事に忙殺されるのではなく、時間の創出をすることが新しい価値創造に向けた第一歩だと考えています。だからこそ、先端のテクノロジーを使って業務効率化を推進しているところですね。
今、将来の成長の種を作るために、全社的にさまざまな取組みを行っています。2018年に本社を移転し、従来とはまったく違う先進的な働き方ができる環境になりました。パーテーションを取り払い、フリーアドレス化して、物理的・精神的なカベを取り払って、自由闊達な雰囲気を創出し始めています。そういった取組みの中に、ITテクノロジーの活用という課題があり、それを活用することによって業務効率化を図り、時間を創出する。そこで捻出された時間を使って、新たな価値創造に向き合う。働き方改革にはそういった考えで取組んでいます。

その中でAI-OCRのようなITシステムが果たす役割として、どのようなことを期待していますか?

(櫻井)RPAもそうなのですが、ただ単に時間を削減できるというものではなく、もっと大きな効果として、「単純作業から人間を解放しよう」というコピーを掲げています。歴史が長く、トラディショナルな働き方が根強く残っている会社だけに、IT系のシステムに苦手意識がある人も少なくありません。その中で「世の中にはこんな便利なものがある」という気づきが生まれ、システムに慣れるに従って、現場から「こういう課題を解決してもらいたい」という要望が上がるようになってもらいたいですね。
現場の本音は「AI-OCRやRPAを導入してもらいたい」ではないんです。単純に、今やっている「メンドクサイ仕事」を代わりにやってくれるシステムが欲しい、ということです。その要望に応えることができることに意味があると考えています。現場は日々の業務があるなかで、BPRを常に考えることは難しく今やっている業務が当たり前になっています。AI-OCRやRPAで何かできるかを現場に見せ「当たり前にやっていたこと」が時代が進むに連れて「当たり前ではなくなっていること」を浸透させていきたいと思っています。ITの力を使って省力化できる業務はまだまだあると思っているのでその範囲を広げていきたいと思っています。
AI-OCRやRPAは、業務効率化に対して期待できるソリューションだと感じているので今後そのような動きを社内で促進するソリューションになると考えております。

DX Suite をご利用いただいてからの感想を教えてください。

(櫻井)第一に製品アップデートのスピードを感じています。画像認識やAI-OCRという技術に対する開発部門の方の知見もありますし、サポート部門と開発部門の風通しのよさによって、良いスパイラルが生み出されていると感じます。三菱地所だけではなくDX Suite を導入している他社様からの「こういう機能があったほうがいい」という意見を、開発にフィードバックする体制が構築されているのではないでしょうか。当社でトライアルを始めたのが2018年9月だったのですが、その時から現在までで「あったらいいな」と思っていた機能が2つほどリリースされました。
それから、社内での情報の共有も密に行われているのがいいですね。導入を検討している段階で、営業の方に非常に突っ込んだ質問もしていました。それこそ経営判断に近いようなことまで。それでも「分からないので持ち帰ります」という返事がほとんどなく、できないことはできないとはっきり言ってくれます。いただく回答が曖昧で、検証の結果「できない」となってしまっては時間がもったいないので、事前にできること・できないことを明確に伝えてくださったことは良かったです。また、スピード感を持ってご対応いただいたのも非常に助かりました。
また、カスタマー部門の方に説明会などを行っていただく場合でも、杓子定規ではない回答をしていただけます。「こういうことをしたい」という要望に対し、「それはできないけど、こういうことはできます」というように、要望の本質を捉えた回答をしていただけるので、とても助かっています。

今後のDX Suite 活用のビジョンについて教えてください。

(櫻井)不動産業界は未だに紙媒体が非常に多く使われています。例えば、各種申込書や管理報告書など、非常に多くの帳票が現場で使われているのが現実です。さらに、四半期に一度、税関係の書類が自治体から郵送されてくるのですが、その処理作業に数人がかりで数日間費やすということが行われています。そういった業務をAI-OCRに任せることで、業務効率化が図れると考えています。また、そういった取り組みをしていくなかで、社内の文書のデジタル化だけではなく不動産業界全体に対しても影響力を与えることができるのではないか、とも考えています。私たちだけが使うのではなく、AI inside と連携を強化して、不動産デベロッパー業をターゲットにして商品開発を行うなどの展開ができたら面白いとも思います。共同開発みたいな形で、AI-OCRのパッケージソフトを作って、他の不動産業にも使ってもらうという形ですね。私たちとしても、新しい価値を生み出していかなければ今後の成長はないと考えているので、そういったことも視野に入れて考えていきたいです。

AI inside に今後、期待することを教えてください。

(石井)何よりもOCRの分野でトップランナーであり続けてほしいですね。そして、その上で期待していることが、新規ビジネスの創出という部分です。
三菱地所グループが持つ不動産業におけるビジネス知見、AI inside が持つITテクノロジーの知見を融合させて、発注者とベンダーという関係性ではなく、イコールパートナーのような関係性で、新しいソリューションを一緒に作っていくという方向性もあるのではないかと考えています。当社では2018年11月から経営企画部の中にDX推進室という組織が設立され、2019年4月よりDX推進部として改組致しました。デジタルテクノロジーを自社の業務効率化にとどまらず、売上拡大のために活用していこうという動きができています。そのような中でAI inside のような、テクノロジー知見を持った企業様と不動産業の知見を持った三菱地所とのケイパビリティをかけ合わせて新しいソリューションに展開していく可能性も見出していきたいと思っています。
不動産業界の今後を考えた場合、新たな価値の創造にも目を向けていくべきだと考えています。少子高齢化が進んでいく中で、従来の住宅市場は縮小することが予想されます。また、働き方改革が浸透し、リモートワークが当たり前の社会になった場合、オフィスのあり方も変わっていくでしょう。そうすると、私たちが今まで行ってきたコアビジネスのみで企業の成長を求めることが非常に難しくなってきます。そういった危機感を全社的に持っていますから、今は真剣に新しい価値の創造に取組んでいるところです。だからこそ、既存の業務の効率化という面と、今後の新規ビジネスの創出という両面で、両社の知見やリソースを活かしながら、共に歩んでいきたいと考えています。

さぁ、データ活用を始めよう。
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