導入事例
ほぼ100%の読取精度!設備工事会社が挑む、紙資料のデータベース化
- 会社名旭シンクロテック株式会社
- 業界建設・不動産
- 月に600~1,000件の請求書を手入力していた
- 紙の資料はPDFで保存し本社にメールで送信後、原本はファイルで保管
- 入力業務そのものがなくなった(現時点では本社のみでいずれ全国展開)
- 紙の資料のデータベース化を推進し、すべてのデータで確認可能に
建築設備、紙パルプ設備、環境エネルギー設備、産業設備等の各設備の設計・施工を手がける旭シンクロテック株式会社。社内のデジタル化に課題を感じ、AI-OCRとRPAを導入。100%に近い読取精度を実現したAI-OCR「DX Suite」の今後の活用展望を伺いました。
建築設備、紙パルプ設備、環境エネルギー設備、産業設備等の各設備の設計・施工を手がける旭シンクロテック
ーー 事業内容をお聞かせください。
山下さま:旭シンクロテックでは、配管設備及び産業空調等の設計及び施工管理をしています。お客様の課題解決に向け、設計サポート業務と工事請負業務をワンストップで行なうことを強みとして事業を展開してきました。営業所は、北海道から四国まで、東京本社を含めて7ヶ所あり、インドネシアへも進出。2021年に創業75年目を迎えます。
社内のデジタル化に課題を感じ、2020年からDX推進をスタート
ーー 以前はどのような課題があったのでしょうか。
山下さま:恥ずかしながら、弊社はこれまでITやデジタルに関する事項にはめっぽう弱く、業務効率化を行なうにあたってもどのように進めたらよいのか悩んでおりました。DXが叫ばれる中で「流石にこれではまずいだろう」という声が役員から上がり、中期経営計画2022の目標を達成するために、デジタル化を推進していくことになりました。自社の分析を行なったところ、膨大な紙の資料を活かしきれていないこと、また紙が業務効率化を妨げていることが分かったのです。AI-OCR対象帳票の一つである、お客様からの請求書は、人がチェックして入力し、紙はすべてファイルに綴じて保管されていました。また、現場でトラブルがあった際に必要な書類を探そうとすると、ファイルから探すことになりかなり時間がかかります。そのため、もう一つのAI-OCR対象帳票の工事現場のヒヤリハット報告書や工事完成図書など、さまざまな紙の書類をすべてデータベース化する必要があると感じていました。
ーー 全国の営業所では、何件の請求書を処理しているのでしょうか。
山下さま:毎月600〜1,000件の請求書を処理しており、1件の処理に10分かかると仮定して、月におよそ100時間かかる計算です。年間にすると、1,200時間が請求書の入力業務に費やされていました。
「読取精度」と「使いやすさ」を軸に比較。ほぼ100%の精度が決め手
ーー AI-OCRの選定について、どのように比較検討されたのでしょうか。
山下さま:比較検討のために、DX Suite とその他数社でトライアルを実施しました。その際に評価軸としたのは、読取精度です。特に手書き文字を読み取ることができるかを重視しました。請求書はもちろん、配管関係の工事の図面の読み取りができるかどうかをトライアルで検証しています。図面の小さく潰れた文字はDX Suite でもさすがに読み取れなかったのですが、請求書の読取精度はほぼ100%でした。もう1つの評価軸は、使いやすさです。弊社ではさまざまな業務の内製化を目指しています。最終的に現場の社員がAI-OCRを活用していくことになるので、読み取りや帳票設定も簡単にできることも重視していました。DX Suite は、例えば入社したばかりの新卒社員、森田も一日でできるようになったほど簡単でしたね。
森田さま:マニュアルを読まず、手探りでできたくらい使いやすく簡単でした。仕分け機能のElastic Sorter も一日でマスターできたほどです。
ーー AI inside のサポートはいかがでしたか。
加藤さま:一部の関数で使い方が分からなかった部分があったのですが、担当の方に事例を出しながら手厚く教えていただいて解決することができました。その内容を森田が引き継いでいます。正直、導入時にそれ以外でトラブルになったことは、ほとんどないですね。
現場のAI-OCR導入に対する不安は経営陣から丁寧に説明することで解決
ーー 導入にあたり、工夫したことはありましたか。
山下さま:以前から、「請求書の入力が大変」という声が伝票入力担当からありました。しかし、いざAI-OCR導入の話が出ると業務の流れも変わるため、不安の声も聞かれるようになりました。そのため、まずは情報システム担当の私ではなく、弊社の役員から導入の目的について説明するように調整しました。会社としてDXに注力はするが、ただ効率化をして終わりではなく、効率化された分を今までできなかった業務に注力していくことを丁寧に伝えました。また、「うちはDXをやっていく」ということを社長や役員、そして社員が聞いているなかで宣言をしています。その時点で部門長やマネージャーからの納得も得ており、効率化できるものは現場から提案してもらえるような流れも作りました。まだ不安に感じている社員へのケアは手厚くしていく必要があり、今後の課題でもあります。
AI-OCR×RPAの仕組みを構築
ーー DX Suite 導入後、請求書の入力業務はどのようなフローになったのでしょうか。
山下さま:まず、取引先から全国の営業所に請求書が送られてきます。DX Suite 導入後は、紙の請求書をすべてPDFに変換することになりました。そのデータをDX Suite で読み取り、CSVデータに出力した後に担当者がチェックします。問題がなければ、そのまま会計システムと社内データベースにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で自動登録する、という仕組みを作りました。そのため、入力業務そのものがなくなりました。(現在は本社のみで実施中。いずれ全国展開の予定)
ーー ヒヤリハット報告書の入力業務はどのようなフローになったのでしょうか。
森田さま:「ヒヤリハットカード」は小さなミスやトラブルを報告してもらうためのカードです。これまでに蓄積された600枚分は、帳票定義から始めて2週間ほどですべて読み取りが完了しました。その際に、どのような文字の読み取りで間違いが起きたのかを記録するため、分析シートも作成していました。98.99%のレベルで正確に読み取れています。今回は弊社内に蓄積する手書き情報のデータ化を行うためのテストとしてヒヤリハットのデータ化を試みましたが、将来的には大量に存在する様々な紙情報のデータ化を実現させ、どういった現場で、どのような事故が多いのか等を正しく把握し、旭シンクロテックの弱みを的確にを分析することで、現場の事故防止に努め、更には、お客様に対してメリットという形で還元していく努力を行ってまいります。
本社の成功事例から全国展開へ
ーー 今後の展望をお聞かせください。
山下さま:AI-OCRの導入と平行して、セキュリティの強化と社内の課題の分析を行なっていました。その結果、まずは全体として基幹系や人事系のシステムを数年後にはワンストップ化したいと考えています。そのためにも、来年度中には、紙の書類や経費の計算をすべて電子化していきたいですね。勤怠や会計、人事といったそれぞれのシステム同士を繋いでいくためには、AI-OCRとRPAは絶対に必要です。直近の展望としては、本社で導入したDX Suite による請求書処理の流れを、全国の営業所に展開していきます。
ーー 今後はDX Suite の活用だけでなく、AIを作るためのソフトウェア「Learning Center」の導入も検討されていると伺いました。
山下さま:工事現場の受発注では、未だに多くの紙が残っており、企業によってバラバラのフォーマットで作成された書面が飛び交っています。その都度フォームを作るのではなく、非定形で取り込めないと作業負荷はなかなか減りません。Learning Center では、非定形帳票をAIに覚えさせ、データベース化できると聞いておりますので、そこで得られたAIと得たノウハウを他の建設業者さんに開放して使っていただければと考えています。
自社に眠る紙の資産を活かすためにAI-OCRは必要不可欠
ーー AI-OCRの導入を検討されている方に向けてアドバイスはありますか。
山下さま:まずしっかりトライアルを行なって他社製品と比較するべきだと思います。比較検討をしないと、あとでトラブルになる可能性もあるかと。手書き文字の読取精度や帳票定義の方法など、評価項目ごとに点数化してみると良いと思います。弊社ではしっかりしたトライアルの結果、DX Suite を選びました。AI-OCRは自社に紙として眠る資産を活かし、今後も生き延びていくために、間違いなく必要なツールだと考えています。