導入事例
グループ展開で全国拠点に導入!約60%の業務時間削減に成功
- 会社名株式会社神戸製鋼所
- 業界製造
- 多くの拠点で紙の入力業務が負担になっていた
- 社内アンケートの入力業務に1,200時間/年かかっていた
- 約60%の業務時間削減に成功
- 全社で同じツールを使用することでノウハウが蓄積され、使い方の共有も楽になった
創業明治38年、鉄鋼だけでなく、機械製作や電力事業も手掛ける大手鉄鋼メーカーの株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)。本社を置く神戸だけでなく、北海道から九州まで全国に工場や支社といった拠点があり、その現場では納品書や作業証明書、アンケート内容のデータ化入力を手作業で行なってきました。全国の拠点でデータ入力業務の効率化を図るため、DX Suite のグループ展開を実現した背景や、導入後の効果を伺いました。
貴社事業と業務内容を教えてください。
藤田さま:株式会社神戸製鋼所は鉄鋼メーカーの中でも、「素材」「機械」「電力」の3事業部を柱とした複合経営であることが特徴です。「素材系事業」では鉄鋼アルミやチタンといった、主に自動車分野に使われる素材を、「機械系事業」では圧縮機や水素ステーションを製作・販売しています。そして「電力事業」では電力供給事業者として「神戸発電所」を稼働させており、神戸市におけるピーク時電力需要のおよそ70%をカバーしています。
私たちはIT企画部の働き方変革チームに所属しており、全社業務の効率化を目指して活動しています。RPAやOCRといったツールの導入から運用などが担当です。各事業部門にもシステム部門はあるのですが、我々は全社の共通基盤を構築することでより効率的な働き方を実現するために業務を行なっています。
DX Suite 導入の背景と課題を教えてください。
藤田さま:各支店や工場といった現場へのヒアリングから「手書き文字のシステムへの入力業務が負担になっている」という課題があることが分かりました。2017年から本社の社員が全国の拠点を回り、現場にある課題を吸い上げる活動をしている中で発見した課題です。取引先や仕入先から送られてくる伝票はどうしても紙になります。また、協力会社様に業務を依頼した場合、完了後に受け取る納品書や作業証明書も紙の場合がほとんどです。社内アンケートの集計、入力業務も負担になっていることが分かりました。社内ではよく実施されるワークショップのアンケートも紙で行なっており、現場担当者が時間をかけて入力していたようです。紙の入力業務によって、本来やるべき業務の時間が少なくなってしまったり、入力ミスが発生したりするという課題を解決するために、全社的に使えるようなソリューションとして、AI-OCRの導入を2018年から検討し始めました。
比較検討はどのように実施されたのでしょうか。
藤田さま:AI-OCRの導入に向けて、まずは1部門を対象にPoC(概念実証)を始めました。DX Suite も含めた8社ほどのツールを比較検討するために、実際の業務の中でテストをすることになったのです。DX Suite は電通国際情報サービス様からのご紹介でした。評価項目としては第一に「読取精度」、その他にコスト面、使いやすさ、ユーザビリティ、「現場で読取設定ができる」ことを重視してPoCを行ないました。社内アンケートの読み取りで比較した結果、手書き文字の読取精度は想像以上に高く、ダントツでDX Suite が高評価でしたね。
また、使いやすさも問題ありませんでした。なぜ「現場で読取設定ができる」ことを重視していたのかというと、実際にツールを運用していくのは各拠点の現場だったからです。IT企画部で全てのAI-OCRの設定を行うのは当然無理ですし、アンケートや伝票のフォーマットは定期的に変更もあるので、現場でフォーマット変更ができないツールは実用的ではありません。DX Suite はその点もクリアしていました。PoCの結果、2019年にDX Suite の導入を決定し、2020年から本格運用に入っています。初期は神戸製鋼所本体と、導入を希望したグループ会社のみに導入していました。しかし、全社で同じツールを導入することで無駄なコストを削減できることや、使い方やノウハウを社内で共有することもできるため、神戸製鋼グループ全体で導入することにしました。
DX Suite はどのように利用されているのでしょうか。
今井さま:現場の業務毎にDX Suite を活用している職種は違っていますが、エンジニアの方も事務職の方も帳票の設定を自ら行い読取を行うことができています。ITに詳しくない、経験があまりない社員でも使えている状態だと思っています。当初は「本当にOCRは使われるのだろうか」と不安に思っていたこともあり、使用者数は150名くらいを想定していました。しかし、現在の登録アカウント数は約300名なので、やはり現場では帳票入力を自動化したいという需要はあったのだなと感じました。
藤田さま:ただ、それでも「使いこなせている人」と「使えてない人」がいる状態です。これは推測ですが、「使えていない人」は複雑な処理をしすぎてしまったか、最初から100%完璧な読み取りを期待していたのかと思っています。「OCRを入れればなんでも解決できる」と思い込むのではなく、「読み取りエラーがあった場合はどのように解決するのか」といったルールを決め、業務フロー全体をしっかり作ってあげることが大事です。
今井さま:DX Suite に関する問い合わせや質問は、Microsoft社のTeams(ビジネスチャットツール)上に用意されたOCR専用のグループに一元化するようにしています。これによって、一度答えた質問は後から参照することができるので、全社にノウハウが蓄積するのです。また、定期的にOCR活用のTipsや事例をまとめた資料もグループ内で共有しています。
DX Suite 導入後のご感想と成果についてお聞かせください。
藤田さま:現場の社員からは、業務時間の削減だけでなく、精神的な負担も軽減されたという声が届いています。紙を見ながらPCに入力し、ミスがないか手作業で入念にチェックするという業務は大変ですし、「間違いは許されない」というストレスも感じていたそうです。DX Suite で、まず紙データを読み込んだ上でPC上で確認するという業務ではそうしたストレスがないとのことです。
今井さま:定量的な成果としては、帳票入力にかかっていた時間が半分以下になったという実績が確認できています。具体的な事例としては、社内アンケートの入力業務です。これまで年間11,000枚〜12,000枚ものアンケート用紙を手作業で入力していましたが、1時間に10枚ほど、つまり1,200時間もかかっていました。しかしOCRを使うと、1時間で20枚〜30枚は処理できますから、業務時間が半分以下の400時間〜500時間で収まっている計算です。正確な計算はできていないのですが、その分の人件費も抑えられています。
藤田さま:また、協力会社様から受け取る作業証明書についても、1ヶ月あたり3.3時間の短縮効果がでたと聞いています。年間ですとおよそ40時間になりますね。通常、新しいツールを導入する際、費用対効果は数値で厳しくチェックしていますが、DX Suite に関しては現場の声で十分効果がわかります。現場の負担が軽減され、仕事の質が上がっていることが一番大事だと考えています。
今後の展望を教えてください。
藤田さま:IT企画部では、RPAの活用も含めて幅広い業務の自動化・効率化に挑戦していきたいと考えています。経営的な意図もありますが、こうしたITによる業務効率化は関連会社や各拠点の現場からの反応が非常によいですし、「働き方」が変わってきているなと実感しています。そうした中で、今後もDX Suite を活用していき、神戸製鋼所の幅広い業務効率化に、力を入れていきたいですね。
AI-OCRの導入を検討されている企業様へのアドバイスをお願いします。
今井さま:とりあえずスピード感重視で、小さい事例からまず試していくべきだと思います。さまざまな検討を重ね、ガチガチに計画や要件を固めてしまうと動きが遅くなってしまいます。小さい成功を積み重ねた上で、全社に向けてアピールしていくことが重要だと考えています。