導入事例
業務部門で実現、ITを活用した業務プロセスの改革
- 会社名リコーリース株式会社
- 業界金融・保険
リース・割賦事業、金融サービス事業を軸としているリコーリース株式会社。働き方改革に伴い、ITを活用した業務プロセスの改善、場所にとらわれない働き方を目指し、属人化が課題とされる紙帳票の入力業務にAI-OCRを導入。システム部門ではなく、業務部門が主体となり行なった、AI-OCR導入までの道のりを伺いました。
AI-OCR導入の背景を教えてください。
梶原さま:当社では2017年頃から、総合金融サービスに対応した先進的・高品質・高効率な業務プロセスの再構築をすること、業務オペレーションの作業時間を削減しリソースの有効活用につなげることを目的に、ITを活用した業務プロセスの改革を推進する動きがありました。
その目的を実現するため、私達が所属しているバックオフィスの業務改善や企画を担当する業務戦略室では「業務の標準化・単純化、場所にとらわれない業務化」をミッションとして掲げました。
AI-OCR導入の検討は、その取組みの一環で属人化が課題とされる紙帳票の入力業務の効率化を図るために始めました。
AI-OCR導入のプロジェクトにおける、皆さまの役割を教えてください
山崎さま:業務戦略室の室長として、プロジェクト全体の責任者をしています。マネジメント層や現場に対しプロジェクトを通して向かうべき姿やAI-OCR導入の必要性を伝える役割を担っています。
梶原さま:山崎の下で業務の改善や企画を担当し、プロジェクトマネージャーと口座変更依頼書のチームリーダーを担っています。
谷岡さま:プロジェクト全体のアドバイザーと、サプライヤー向けの終了物件引取確認書満了のチームリーダーを担っています。定年退職してからの再雇用で、過去のマネージャー経験を活かし、メンバーの相談役となっています。
品田さま:ユーザー向けの満了ハガキのチームリーダーを担っています。企画経験やIT知識はないのですが、現場から異動後、半年でプロジェクトに参加しています。
DX Suite をご採用いただいた理由を教えてください。
梶原さま:どのAI-OCR製品を導入するか、AI inside 含め4社ほど比較しました。1ヶ月の有償トライアル(https://dx-suite.com/success/)で検証した結果、読取精度の高さ、オペレーションのわかりやすさ・簡単さ、クラウド上で利用できることからDX Suite を採用しました。
従来はRPAなどITを活用した業務改善はシステム部門が中心となり行なっていましたが、業務部門がITツールの選定から検証まで行なうのは今回のAI-OCR導入が初めての試みでした。このことからも、システム部門でなくても導入ができるという簡単さはよくわかると思います。
また、AI-OCR製品を調べていく中で、枠ギリギリに書かれている文字は読取りができないことが多かったのですが、唯一DX Suite はその課題をクリアすることができました。検証に利用したリース契約書は、活字ですが項目数が多く枠いっぱいに印字されおり、他製品では読取りができないことが多かったです。
DX Suite を初めて使ったときの感想を教えてください。
品田さま:検証時、読取り後の修正を担当していましたが、ほとんど修正をすることもなく、切れている文字でも推測して読取りをしてくれるため、とても頭が良いんだなと思いました。反対に、そう読まなくてもいいのに!と思うこともありましたね。
谷岡さま:こんなにも読取りができることに衝撃を受けました。あと、画像をアップロードして読取りをしている数秒の間、一生懸命読んでいる姿が健気で愛着が湧いてきました。
梶原さま:私も愛着が湧く気持ちはとてもよくわかります。というのも、OCRは数年前から知っていましたが、今のAI-OCRの読取精度はすごいとDX Suite を活用したことで感じたからです。
DX Suite 導入前後の業務フローの変化を教えてください。
品田さま:わかりやすい例として2つの帳票で説明します。まず、満了終了回答ハガキの入力業務は、社内に常駐しているBPO業者の3名が担当しています。導入前は届いたハガキをBPO業者が管理システムに直接入力していました。導入後は、ハガキのスキャンニングからCSVでダウンロードするところまでを3名のうち1名が担当しています。他の2名はRL契約終了物件引取確認の業務に回っています。
谷岡さま:RL契約終了物件引取確認の入力業務では、導入前はBPO業者ではなく社員が入力業務を行なっていました。入力業務専任というわけではなく、業務の一部として行なっています。導入後は、元々満了終了回答ハガキを担当していたBPO業者の2名がスキャンニングからCSVでダウンロードするところまでを担当しています。
導入後の効果を教えてください。
品田さま:入力業務に手間と時間をかけていたので楽になったと思います。また、帳票を画像で保管するフローにできたため、誰でもどこでも帳票を確認できるようになったことも良かったと思います。
梶原さま:正直なところ、コスト面での費用対効果としてはそこまで大きくはないです。しかし、ミッションである「業務の標準化・単純化、場所にとらわれない業務化」は達成することができました。紙をすべてなくすことはすぐにはできないことですが、今回のプロジェクトを通じ、手段を置き換えることで、短期間で業務を現場で変えられることが証明できたと思います。
導入にあたり、工夫したことや苦労したことを教えてください。
谷岡さま:現場の担当者へのレクチャーのため、簡単な手順書を自分で作成しました。実務で活用する1週間前に、一度実演して見せ、その後は手順書を見ながら操作してもらいました。特段アドバイスすることもなく、100枚ほどの帳票を使用し、1時間でレクチャーは完了しました。
山崎さま:AI-OCR導入にあたり、マネジメント層と現場への説明に力をいれました。社員の業務負荷は減った一方でBPO業者への依頼業務が増えたため、全体を通して見ると大きな変化がなかったためです。マネジメント層と現場はそれぞれ懸念点が異なるため、マネジメント層には施策全体の主旨や目的を達成することをメインに説明し、現場には業務一つ一つを丁寧に伝えることを意識しました。
品田さま:現場へのプレゼンの際に、VBAなどの専門的な言葉は使わず、現場に伝わりやすい言葉に置き換えることを心がけました。現場を経験している私は、プロジェクトの主旨や目的よりも、自分の業務がどう変わるのかが知りたいと思うため、一つ一つの業務の具体的な流れを説明することに注力しました。その結果、現場からの疑問もなく、プレゼンを終えることができました。
DX Suite への要望を教えてください。
品田さま:裏表で1セットになっている帳票を、1つのデータとして読取りができたら良いなと思います。CSV加工などでデータを一つにすることはできるのですが、画像にする時点で両面の画像が一度にエントリーできるようになれば良いなと思いました。
谷岡さま:帳票ごとにCSVのダウンロード先のフォルダを設定できたらいいですね。API連携で可能だと思いますが、その場合システム部門に依頼するかたちになるので、現場でも簡単にできるようになったら嬉しいです。
梶原さま:エントリー後に、指定のページに戻ることができれば良いですね。エントリー後は1ページずつしか戻ることができないので、見直したいところを氏名などで検索して対象のページに戻ることができたら便利だと思います。また、どうしても紙でなくてはならない業務もあると思うので、スキャンニング作業も含めたパッケージとして製品化してもらえると助かります。
今後の活用展望やAI inside への要望を教えてください。
谷岡さま:今後はDX Suite の操作をRPAで行えるようにしていきたいと思っています。
梶原さま:非定型の帳票をAI inside Learning Center(※)で挑戦中です。現在アノテーション中ですが、今期中には利用できるようにしたいですね。
山崎さま:契約書の条文の変更箇所をAIで判別できるようになったら嬉しいですね。お客さま返ってきた契約書の条文が、事前に通知なく変更されていることもあり、その差分を人の目で確認しているため、かなりの時間を要しています。テキスト化する必要ないので、AI inside の画像認識の技術で差分があるところだけ色がつくなど、ぱっと見てわかるような印がついてくれるととても助かります。AI inside の技術ならそれが実現できると思うので、今後に期待しています。
※2020年6月時点でアルファ版として提供する、AI開発におけるステップを網羅した社内システムです。