導入事例

2023.09.25
株式会社テプコシステムズ

AIモデルとAI-OCR、そしてアジャイルで在宅でも送付物を確認できるように。未経験者が1ヶ月でAIモデルを作成できたワケ

株式会社テプコシステムズ
対象帳票
DM, 請求書, 健康保険関連の書類, 健康診断の結果, PCやディスプレイ
before
  • 会社に届いた送付物は総務が一括して受け取り、各部署へ渡していた
  • コロナ禍で在宅勤務を導入したものの、送付物を確認するには出社する必要があった
after
  • 簡単にAIモデルを構築できたため、リソースをシステム開発に費やすことができた
  • 会社に届いた送付物をどこでも確認できるようになり、送付物確認のための出社が不要になった

電力の安定供給を支える様々な業務系システム、制御系システムの構築を担ってきた株式会社テプコシステムズ。電力自由化、カーボンニュートラル実現など、電力業界全体を取り巻く環境変化に合わせ、よりスピーディーな開発を実現するため、アジャイルでの業務改革に取り組んでいます。その一環で構築された「送付物管理システム」に、弊社のAnyData(※)とDX Suite をご導入いただきました。導入からAIモデルの構築、社内リリースまでの流れ、そして導入後の成果についてお話を伺いました。

※AnyData(旧Learning Center Vision)

電力システムの大規模開発と並行し、「アジャイル」にも取り組むテプコシステムズ社

ーー 業務内容をお聞かせください。

和田さま:弊社は東京電力グループの一員として、電力事業で培った専門技術を活かすことでお客様に役立つソリューションを開発、提供しています。また、社内向けのシステム開発も手掛けておりまして、今回の取り組みである「送付物管理システム」の開発も、働き方改革の一環として総務部門からの要望を受けたことからスタートしています。

池本さま:私たち総務部門では、備品の発注、環境・防災・情報セキュリティ管理や、施設管理、そして来客や電話、送付物の応対など、一般的なバックオフィス業務を担っています。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オフィスに出社しない社員も増えたため、在宅と出社を組み合わせたハイブリッドなバックオフィスを実現するため、DXを進めていることが特徴です。

ーー 貴社ではアジャイルに対して、どのように取り組まれているのでしょうか。

久保さま:弊社では以前からDX推進に対してさまざまな取り組みをしてきたのですが、なかなか「アジャイル」という考え方、よりスピーディーにお客様に対して価値を提供していくという考え方が、社内全体に浸透していませんでした。

そこで組織そのものを「アジャイルマインド」に変革していくという強い意思のもと、アジャイルセンターという新しい部署を立ち上げ、社内全体に、そして東京電力グループに対して「アジャイルマインド」を定着していくこととなりました。

ーー 貴社が「アジャイル」を重視するようになった背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

和田さま:電力に関係する基幹システムの開発は、企画だけでも数年単位、開発にはもっと時間がかかり、開発パートナーさんも1,000名以上というとても大規模なものが一般的でした。

しかし、東日本大震災や電力自由化、そして昨今のDXの流れを受け、従来のやり方では不十分であると考えるようになったのです。お客様のニーズを捉え、新しいサービスを次々に展開していくためにはスピード感が求められます。そのためにも、これまでと同様の大規模な開発に加えて、アジャイルも必要であるとの結論に至りました。

コロナ禍で在宅勤務にも関わらず、送付物の受け取りのためだけに出社する事態が発生

ーー 今回の取り組み以前、貴社に届いた送付物はどのように処理されていたのでしょうか。

池本さま:今回構築した「送付物管理システム」以前には、送付物を管理するような仕組みはありませんでした。

以前の方法では、私を含めた総務の担当者3名が送付物を受領し、一括して集積したのち、宛先別に仕分けて部署ごとに設置されたボックスへ投函していました。その後、各部署の担当者が部署ごとにまとめて取りに来るという流れです。平均すると毎日30〜60の送付物を受け取り、それらを30〜40分かけて仕分けていました。

ーー 貴社に届く送付物にはどのような特徴がありますか。

池本さま:最も多いのは広告のDM(ダイレクトメール)や請求書です。その他にも、人事労務に関する健康保険関連の書類や健康診断の結果などが届けられます。大きな荷物では、プロジェクトが終了した常駐先からPCやディスプレイがよく送られてきます。

ーー 今回の取り組みの背景には、どのような課題があったのでしょうか。

池本さま:新型コロナウイルスの感染拡大によって、2021年にはおよそ8割の社員が在宅勤務へ移行したことが最も大きな背景です。職種によっては3ヶ月の間に一度も出社しなかった社員もいたほどで、在宅で勤務している社員宛に大事な請求書や書類が送付されていても、自分か同じ部署に在籍する他の社員が気が付かなければ放置されてしまうという懸念が高まりました。

結局は部署ごとに一人の社員が輪番出社し、その社員が代表して受け取って各担当者のデスクに置くことになったのですが、それでは在宅と出社を自由に選べるようにしたいという会社の方針や、働き方改革の考えに反します。

そこで送付物を一括で受け取る総務とすべての社員が直接つながり、送付物が届いたことを社員一人ひとりに通知するシステムが必要であるという意見がワーキングの中から立ち上がったため、実際にシステム構築を検討することになりました。

総務部と二人三脚のアジャイル開発。AnyDataとDX Suiteの導入背景とは

ーー 「送付物管理システム」を実現するにあたって、どのようにAIモデルを構築することになったのでしょうか。

久保さま:総務部からの要望を受け、アジャイルセンターが「送付物管理システム」の構築に取り組むことになりました。

「送付物管理システム」には、送付先の社員を特定するために、送付物の宛先を撮影した写真の中から「受け取り主の部署名、氏名」と「送り主の会社名と氏名」を切り出すために物体を検知するAIモデルと、その切り出された画像から文字を抽出し、データ化するAI-OCRの2つが必要だと考えたのです。

もともと私たちの部署では通常の開発以外にも研究開発に取り組んでおり、データを収集して学習させた独自のAIモデルを作成したことはありました。ただ、実用的なAIモデルを作成するにはより専門的な知識が必要となるため、現状の開発リソースでは時間がかかってしまい、アジャイル開発ができないという悩みを抱えていたのです。

市民化された、つまり専門的な知識がなくともAIモデルが作成できる方法がないかと模索する中で出会ったのが、AnyDataでした。

ーー どのような理由からAnyDataの導入を決めましたか。

久保さま:今回の取り組みでは、大手の他社がリリースしているAIモデルを作成できるツールとAnyDataを比較検討しています。他社のツールでは、機能が多すぎるし、費用も高額だったため、簡単に導入することはできませんでした。一方のAnyDataは、物体検出に特化したAIモデルに強みがあること、知識がなくとも簡単にAIモデルを作成できること、そして自分たちでサーバをメンテナンスする必要がないことから費用を安く抑えられることが魅力でした。

ーー DX Suite の導入を決めた理由をお聞かせください。

久保さま:すでに導入を決めていたAnyDataと同じ会社が開発している安心感も重要でしたが、やはり決め手は読取精度が高かったことです。以前から別の案件でAI-OCR関連の製品を比較検討しており、かねてからDX Suite を評価していました。

AnyDataとDX Suite は両方とも費用が安く、試行錯誤を繰り返すアジャイル開発には最適なサービスであるとの結論となり、社内の稟議でも苦労することなく予算を承認することができています。

開発未経験でも、サポートなしでAIモデルを1ヶ月で作成!送付物の受け取りをデジタル化

ーー 「送付物管理システム」の構築は、どのように進行しましたか。

和田さま:AIモデルの作成は私が主に担当し、AnyDataの導入から、たった1ヶ月で作成できました。正直ここまで早く作成できると思っておらず、しかも私自身そもそも開発自体が初めてのことでした。これまではプロジェクト管理の仕事が多く、開発の経験がまったくない状態でAnyDataを使用することになったのです。

AIモデルを作成するにあたって、まず最初に取り組んだのが「受け取り主の部署名、氏名」と「送り主の会社名と氏名」がきれいに記載されている画像を選んで学習させることでした。そこから部署名が記載されていない画像などを取り込むことで段々と切り抜きの精度が上がっていき、最終的には平均適合率がおよそ93%のAIモデルを1ヶ月で作成することができています。

久保さま:その後、2名体制のペアプログラミングでAnyDataとDX Suite をアプリに取り込み、AIモデルの作成からおよそ2〜3週間で「送付物管理システム」を構築することができました。

今回のアジャイル開発では、総務の担当者がプロダクトオーナーという役割を担っており、実際にアプリを動かしながら要件を満たしているか確認し、必要に応じて改善していたため、現場の要望に沿ったシステムを構築できたと考えています。

ーー 「送付物管理システム」による業務フローの流れをお聞かせください。

池本さま:以前は総務部が直接受け取っていましたが、現在は別のオペレーションチームが送付物を受け取っています。受け取られた送付物はタブレット端末で撮影され、自動で「受け取り主の部署名、氏名」が切り出され、アプリを通して社員一人ひとりにメッセージが届きます。

メッセージを開くと撮影された写真を見ることができ、DMなどの不必要なものは「破棄」、中身を確認したい場合は「開封依頼」、請求書がPDF化処理される「請求書PDF処理」といった指示を出すことができる、といった流れです。

加えて、このアプリにはダッシュボード機能が実装されており、部署ごとに現在、何件の送付物が届いているかを確認することができることも特徴です。

在宅でも送付物を確認できる環境に。経営層からはアジャイル体制への評価も

ーー AnyDataとDX Suite に対する評価をお聞かせください。

和田さま:どちらのツールもUIがとても分かりやすかったので、サポートはあまり必要ありませんでした。質問したことと言えば、仕様に関する簡単なQ&Aやどのようにしたらより精度が上がるのかくらいです。基本的にはWebサイト上のマニュアルを確認するだけで十分でした。また、一回満足のいくAIモデルを作成できれば、その後は触れる必要がない点でも、非常に導入しやすいツールだと感じています。

久保さま:印象に残っている便利な機能を挙げると、AIモデルのバージョン管理がとても分かりやすく、未経験者の自分でも混乱することがなかった点です。今回のAIモデルでは、最初にモデルとなるような画像を読み込ませることから始まり、段階的にさまざまなパターンの画像を学習させたのですが、このバージョン管理のおかげで平均適合率が高いAIモデルをスムーズかつスピーディに作成できています。

画像切り出しも文字の読み取りもスピーディかつ正確だったため、「送付物管理システム」全体の開発に専念することができました。自社でAIを開発する場合は高機能なサーバの管理が不可欠ですが、クラウド型のサービスなのでサーバメンテナンスの必要もない点も嬉しいですね。

ーー 「送付物管理システム」によって、どのような成果を得ることができましたか。

池本さま:会社に届いた送付物を、社員は在宅勤務時や外出時にも簡単に確認できるようになったことで、以前に課題として抱えていた各部署の社員がローテーションで出社する必要性がなくなりました。これにより、在宅と出社を組み合わせたハイブリッドな働き方の実現に大きく貢献することができました。

ーー 今回のお取り組みに対して、経営層からの評価の声があればお聞かせください。

池本さま:総務が社内システムの開発にここまで入り込んだことは、弊社にとって事例のないことであり、ワンチームでアジャイルに取り組めたことを高く評価いただいています。経営層からは「上下関係がないフラットなよいチームですね」というコメントもいただきました。

和田さま:開発者視点としても、今回のようにアジャイルで開発し、たった2ヶ月で初期版のアプリをリリースできたことは評価されていると思います。AIサービスを活用してシンプルな工数で開発できたことは、今後のアジャイル開発において有益な事例になったと思います。

アジャイル開発にこそ、AIモデルとAI-OCRを。ツール活用でさらにスピーディな開発を目指す

ーー 今後の展望をお聞かせください。

池本さま:総務部の業務には、まだまだ紙を中心とした業務が残っています。今回のようなAIモデルやAI-OCRを活用したシステムによって、少しずつ紙から電子へ移行していき、より効率的な業務フローを構築していくことが今後のミッションですね。

和田さま:たった2ヶ月で「送付物管理システム」を構築できたのは、アジャイルの考え方と、AnyDataとDX Suite のおかげです。本プロジェクトをモデルケースに「送付物管理システム」以外にもさまざまな業務の課題を解決するためのAIツールを構築していきたいですね。

ーー AnyDataとDX Suite の導入を検討されている企業に向けて、メッセージをお願いいたします。

久保さま:目まぐるしく市場が変化するなかで、今後ますます開発のスピード感が重要になってくるはずです。しかし、企業が持つリソースには限界があり、無限ではありません。だからこそ、手間をかけずに構築できる部分は積極的に世の中の便利なツールを活用し、より重要な部分にリソースを投下すべきでしょう。

アジャイル開発にAnyDataとDX Suite は最適だと思いますので、弊社と同じく「スピード感を持った経営」に取り組まれている企業こそ、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。

さぁ、データ活用を始めよう。
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