導入事例
300の機関ごとにフォーマットが異なる健康診断書を生成AI-OCR で読み取り。年間約2,500時間の工数削減を実現した背景
- 会社名株式会社ウィルオブ・ワーク
- 業界その他
- 年間で14,000件のデータ処理が発生し、約3,500時間の業務工数がかかっていた
- 健康診断結果のデータ化の完了までに1件あたり15分もの時間が発生し、納期ギリギリのケースもあった
- 入力ミスが年間で数件ほど発生してしまっていた
- 「DX Suite」導入により、年間2,500時間削減が見込めるほどの業務工数削減を実現
- 健康診断結果のデータ化の業務は1件あたり11分短縮され、4分で処理が完了
- 処理業務に割く人員が減り、データ化以外の業務に対応できる余裕が生まれた
- 入力ミスもゼロへ
販売やコールセンター、介護をはじめ、業種に特化した人材派遣や業務請負、人材紹介、紹介予定派遣サービスなど、幅広い人材ビジネスを展開する株式会社ウィルオブ・ワーク。同社では社内向けの行動指針として「テクノロジーを学ぶ」「自ら動く」「チャレンジを称える」の3つを掲げており、DXによる業務効率化に取り組んでいます。
今回の取り組みでは、同社のバックオフィス部門における派遣スタッフの健康診断結果の入力、処理業務に弊社の「DX Suite」をご導入いただきました。取り組みの背景にあった課題やツールの比較検討、グループ会社への展開、そして導入後に得られた成果についてお話を伺いました。
デジタルの活用による業務効率化、生産性向上に積極的な社風のウィルオブ・ワーク社
ーー 総務グループではこれまでどのようなDXに取り組まれてきたのでしょうか。
山本さま:弊社では「WILLWAY(ウィルウェイ)」という社員の行動指針として「テクノロジーを学ぶ」「自ら動く」「チャレンジを称える」の3つを掲げています。そのため、デジタルの活用で業務を効率化し、生産性を向上していくことに対して積極的な社風です。
私たち総務グループでは、今後も社員、派遣スタッフさんをより多く採用し、事業拡大をしていきつつも、バックオフィス部門全体の人員はあまり増やさずに現状の規模で業務を回していける体制を目指しています。より効率的に業務に取り組んでいくためには、ルーティン業務を生成AIやSaaSに置き換え、社員のリソースは生産性がより高い業務に振り分けていくことが重要だと考えています。
ーー 今回「DX Suite」を導入いただいた健康診断結果の入力、処理業務についてお聞かせください。
立花さま:私たちのような派遣元である派遣会社には、派遣スタッフさん(派遣労働者)に雇入のタイミングと1年以内に1回、定期的に健康診断を受けていただくことが厚生労働省が所管する「労働安全衛生法」によって義務付けられています。そしてその健康診断結果は、私たちが契約する産業医に対して3ヶ月以内に報告し、取りまとめ後に労働基準監督署に提出しています。
この健康診断結果は、居住歴や業務歴、身長・体重、血圧、心電図検査など、10以上の項目の報告が義務付けられています。診断項目に加えて氏名や住所といった個人情報を加えると、合計40箇所の項目に記入された情報を入力する必要があるのです。
弊社の場合、BPO業務を専門とするグループ会社に、健康診断結果のPDF化と、結果の入力作業を委託してきました。
1ヶ月で2,000件もデータ入力することも。期限内に産業医へ報告するため、余裕ある体制を目指した
ーー 健康診断結果の入力、処理業務には、どのような課題があったのでしょうか。
立花さま:まず一番の課題は、弊社と契約している全国の健診実施機関(300箇所以上)ごとにフォーマットの異なる紙面の健康診断結果が届いていたため、一つひとつを複合機でPDFに変換し、Excelへの手入力でデータ化しなければならないことです。健診実施機関から直接派遣会社へ健康診断結果がデータで送られればスムーズなのですが、外部へのデータ流失を防ぐ観点から、紙媒体でしか報告が受け取れません。
この入力業務は毎月発生し、年内に間に合うよう受診された健康診断結果が年末年始に集中して届くため、1ヶ月で2,000件もの処理をしなければならないこともありました。こうした繁忙期は、産業医への報告義務である3ヶ月以内という締め切りにギリギリとなってしまうことが多々ありました。
山本さま:データ入力業務は年間ではおよそ14,000件ものデータ入力業務が発生していた計算です。1件あたりの処理時間は、手元に届いた健康診断結果をPDF化し、およそ40箇所の項目の入力が完了するまでに15分はかかっていました。
つまり、年間で3,500時間もの業務時間が発生することになります。通常時は4〜5名、繁忙期は10名の体制でデータ入力に対応してもらっていたのですが、かなり大変だったと思います。実際、年間で両手で数えられるくらいの件数ですが、細かな入力ミスが見つかることもありました。
こうした背景から、健康診断結果の入力、処理業務におけるデジタル活用を検討することになったのです。
BPOサービスや他社のAI-OCRと比較検討。決め手は非定型帳票への対応と読取精度
ーー そもそも「OCR」という技術はご存知でしたか。
立花さま:複合機に搭載されている「FAX-OCR」は知っていましたが、読取精度が低いため、業務への導入は現実的ではないと判断しました。ちょうどニュースでAI技術の進化が著しいことを知り、特に生成AIを活用した、健康診断結果の入力、処理業務に活かせるソリューションを探して展示会へ足を運ぶことになり、そこで「AI-OCR」と「DX Suite」を初めて知りました。
ーー デジタル活用以外のサービスとは比較検討しましたか。
立花さま:他の人材派遣会社さんでは、健康診断結果の入力、処理業務のようなバックオフィス業務を外部サービスに委託しているケースがあります。健康診断の対象者に関する情報を共有すれば、あとは健診実施機関の予約から健康診断結果の回収、労働基準監督署への提出までを一気通貫で手掛けるサービスです。
派遣会社からすれば確かに便利なサービスですが、いわゆるBPOサービスになるために費用が高額で、健康診断の実費を含めれば派遣スタッフ一人あたり11,000〜12,000円もかかってしまいます。これが年間で数千人分かかるとすれば、数千万円もの費用が必要となる計算です。高額な費用がかかること、また健康診断結果というプライバシーに関わる重要なデータをなるべく外に出さないという観点からも、デジタル技術を活用して現在の業務を効率化すべきと判断しました。
ーー AI-OCRのソリューションを比較検討するにあたって、どのような要素を重視しましたか。
立花さま:300箇所以上の健診実施機関ごとに紙面のフォーマットが異なるため、一つひとつ定型帳票として読取項目を定義していくのは現実的ではありません。すべての非定型帳票に対応し、高い精度で読み取ってくれることは必須条件でした。
また、期待される人件費(時給✕業務時間)の削減と、ソリューションの導入、運用コストを比較しています。試算した結果、やはりAI-OCRのソリューションを導入したほうが費用対効果が高いと判断しました。
特にAIの技術は企業の開発力、資金力や学習させるデータ量によって精度が変わってくると考え、大手企業のAI-OCRのソリューションを中心に最終的に比較しました。その結果、「DX Suite」の導入を決めました。
1ヶ月もかからず「DX Suite」を導入。生成AIを活用した「項目抽出」で必要なデータのみを抽出
ーー 「DX Suite」の導入は、どのように進行しましたか。
山本さま:2023年12月には、健康診断結果の入力、処理業務より先行して手書きアンケートのデータ入力業務に「DX Suite」を導入しました。グループ会社外のお客さまから単発でご依頼があり、合計8万件ものアンケートを4ヶ月以内にデータ化し納品という、数十人規模で取り組み、1日500件はデータ化しないと納品スケジュールに間に合わないご相談だったため、急遽「DX Suite」を活用することになったのです。
基本的には活字で書かれている健康診断結果の書類と違い、未成年の方による手書きのアンケート用紙で回答項目も15箇所もあったため、正直なところ読取精度に不安がありました。しかし実際に複合機でPDF化して「DX Suite」に読み取らせたところ、ほぼ正確な文字でデータ化することに成功しました。
また、チェックボックスにチェックを入れるだけの回答が多かったことから「文字なし」の読み取り箇所が多かったことで、「DX Suite」の料金を安く抑えることができたことも高評価でした。納品スケジュールにも無事間に合い、この手書きアンケートのデータ入力業務の経験が健康診断結果の入力、処理業務への「DX Suite」の導入に役立っています。
ーー 健康診断結果の入力、処理業務における「DX Suite」の導入は、どのように進行しましたか。
立花さま:2024年7月から本格的に「DX Suite」を導入していきました。帳票の定義も不要でしたので、1ヶ月もかかっていません。
今回の案件で活躍した機能が、生成AIを活用した「項目抽出」でした。健康診断結果の中で本当に必要なのは数字だけなので、たとえば身長の項目の「cm」や血圧の項目の「mmHg」といった単位は読み取らず、数字だけをデータ化するように設定しました。これによって単位の大文字・小文字の表記揺れを防げただけでなく、欲しい情報だけを抽出することに成功しています。
その他には、産業医への報告義務がある検査項目を漏らさず読み取るように設定しています。検査項目の表記揺れ、たとえば「ヘモグロビンA1c」「HbA1c」といったカタカナと英語の表記なども、特に事前の学習や特別な業務をせずに初期設定を終えることができました。設定で分からないことがあってもヘルプセンターを見ればほとんど解決できたこと、難しい指示をしなくてもスムーズに読み取れたことに感動しています。
ーー 「DX Suite」の導入後、業務プロセスはどのように改善されましたか。
立花さま:派遣スタッフさんが健康診断を受け終わると、それぞれの健診実施機関から紙の健康診断結果が弊社の新宿拠点にあるBPOセンターに郵送されてきます。その後、新宿のBPOセンターで複合機のスキャナーですべてPDF化し、全国のBPOセンターに共有されているグループ内ネットワーク内のフォルダに格納します。
以前の場合ですと、全国のBPOセンターの担当者が格納されたPDFを確認してExcelにデータを手入力し、他の担当者が入力内容に間違いがないかを確認していました。「DX Suite」導入後は、全国のBPOセンターの担当者がPDFを「DX Suite」に読み込ませてデータ化し、そのまま同じ担当者が確認するという業務プロセスに変わりました。
1件あたりのデータ化を11分短縮し、年間2,500時間の削減を実現。細かな入力ミスもゼロに
ーー 「DX Suite」を導入したことで、どのような成果が得られましたか。
立花さま:担当者が1件の健康診断結果を紙で受け取り、データ化を完了するまでの業務時間が15分から4分へと短縮され、11分の削減に成功しました。つまり、年間で3,500時間も費やしていた業務時間がおよそ1,000時間に短縮し、年間2,500時間を削減できることになります。
健康診断結果の入力、処理業務に割く人員が減り、データ化業務に余裕が生まれたと思います。その他にも取り組まなければならないBPO業務などにリソースを振り分けることができるようになったことは、大きな成果だと思います。
また、年間で数件だけ発生していた細かな入力ミスも、現時点では1件も発生していません。
山本さま:「DX Suite」の導入によってオペレーションの改善や業務効率化を図ることで、年々増加する社員や派遣スタッフさんの管理業務をバックオフィス人員を増やすことなく対応できること、書類のデータ化全般の業務工数を削減できることは大きな成果だと思います。
ーー 社内からはどのような評価の声がありますか。
立花さま:バックオフィス部門である管理部には紙で処理してきた業務が山のようにあります。たとえば労働局から送られてくる、数百〜数千名単位の雇用保険番号のデータ化に「DX Suite」を導入し始めました。Excelに出力したデータをマクロと組み合わせることで、すべての雇用保険番号と個人名を紐付けることができるようになっています。手入力では数ヶ月かかってもおかしくない業務が、わずか5分で終わることに驚いています。
また、管理部の他のグループからも、紙面でしか届かないクレジットカードの明細や一部の領収書のデータ化にも活用したいとの声があり、実際にいくつかの業務で「DX Suite」を共有しています。バックオフィス業務の「面倒くさい」を少しずつ解決できている実感がありますね。
山本さま:管理部全体で当初「年間3,000時間の業務効率化を実現する」というミッションが与えられていたのですが、「DX Suite」の導入だけでトータル6,000時間ほどは削減できた計算です。私と立花、たった2人で目標の倍の数字を達成できたことは、社内からも表彰されたほどで経営層からも高く評価されました。
ペーパーレス化で紙からデータへ移行し、さらなる業務の効率化につなげたい
ーー 今後の展望をお聞かせください。
立花さま:健康診断結果の入力、処理業務の一連の流れのすべてを「DX Suite」で自動化したいですね。現在は、産業医が一人ひとりの健康診断結果に対して「要再検査」「問題なし」などの所見を手書きで書き込み、その書類は私たち総務グループに返送されてくるのですが、その記入された所見の内容のデータ化にも「DX Suite」を今後活用していきたいと思います。
山本さま:管理部全体のペーパーレス化は今後も引き続き取り組んでいきたいですね。紙の書類をどんどんデータ化していければ、他のツールやシステムとの連携がさらに進み、業務全体の効率化が進むのではないかと期待しています。
ーー 最後にAI-OCRの導入を検討している方へ、アドバイスをお願いします。
山本さま:これまで人の手業務でなければ無理だと思われていたことが、意外とすんなり機械やデジタル、そしてAIに置き換えられるという経験は、技術がどんどん進歩するうえで当たり前になっていくはずです。そのことを恐れず、仕事を効率化できたらさらに重要な仕事や着手できていない仕事に取り組んでいく姿勢が大事だと思います。
以前はAI-OCRすら知らなかった私たちでも簡単に「DX Suite」を活用できましたので、まずはぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。