導入事例
AI-OCRをテレビ中継で活用、業界を変える新たな取組みで業務効率化を実現
- 会社名株式会社テレビ朝日
- 業界その他
- 業務が専門的すぎるため属人化しつつあった
- 人的ミスが許されない業務でプレッシャーに
- 精度100%でシステムに業務を任せられるようになった
- 複数の競技に活用し更なる業務効率化が期待できる
英語選手名のテロップを瞬時に検知し、自動で日本語選手名のテロップへと変換する「Video OCRシステム」をAI inside と共同開発した、株式会社テレビ朝日。AI-OCRを映像の世界へ結びつけたきっかけや効果だけでなく、新たな取組みについてもお話しを伺いました。
貴社事業内容と小野様の業務内容を教えてください。
当社はテレビ放送事業を行う放送事業者です。そのなかでも、私の所属しているチームでは先端技術の調査、企画、放送への活用、といったことをミッションとしております。元々私自身は、スポーツ番組のテクニカルマネージャーとして技術全般を見ていたり、番組にバーチャルCGを取り入れたり、制作技術に大きく関わってきました。現在先端技術を調査する中で、番組に大きく貢献できそうなAIを使った企画として「Video OCRシステム」プロジェクトを立ち上げました。
AI inside を知ったきっかけやAI-OCRの検討背景を教えてください。
テレビ朝日グループではスポーツの世界大会を扱うことが多く、地上波だけでなくBSやCSなどの衛星放送、「テレ朝動画」などの動画配信サイト、インターネットテレビ局として展開する動画配信事業「AbemaTV」など配信するチャンネルが増えていく中で、働き方改革や業務効率化をする必要性を感じています。
2018年から市場でAI技術が増えてきており、社内でも番組制作の過程で業務効率化を行ないたいという声があがっていたため何か活用できないかと思い、展示会へ行ったことがAI inside を知ったきっかけです。そこでまず第一歩として、スポーツ中継の国際映像に出る選手名のテロップを日本語へ変換する業務でOCRを活用したいと思いました。
DX Suite をご採用いただいた理由を教えてください。
テレビのテロップは書体や文字間など特殊なものが多くあるうえに、中継のテロップ変換は読取精度が100%である必要があるため、精度は重要な選定ポイントです。さまざまな製品を検証した結果、読み取りが難しい手書き文字の精度が最も高かったDX Suite を採用しました。
これまではテロップ変換業務をどのように行なっていたのか教えてください。
映像に映った選手をオペレーターが目で見て判断し、元々用意されているシステムから選手名や過去の成績などの情報を選択して日本語のテロップを付けています。バックアップ含め4台ほどの実機があり、数名で変換業務を行なっています。1人目は選手がいるホールの番号、2人目が選手名、3人目が過去の成績などの付加情報、という流れで選手の情報を選択してく仕組みです。
その業務においてどんな課題があったのか教えてください。
オペレーターは選手の顔や名前を覚えることが必要不可欠であり、新人が入ってきたとしても瞬時に変換する熟練スタッフになるには相当な時間がかかります。そのため、属人化していることが課題でした。
また、ゴルフは他のスポーツと比べると進行するテンポが比較的ゆっくりとしたコンテンツですが、人の手で行なうため変換ミスがあることも課題となっています。
「Video OCRシステム」を開発していく中での心境を教えてください。
当社のテロップを自然な位置に自動で載せるシステムとAI inside のエンジンを組み合わせた「Video OCRシステム」は、1年ほど試行錯誤しながら開発を進めてきました。しかし、100%の精度で変換できない場合は今まで通り人の手で業務を行なう必要があります。人員を確保する必要があるならば業務効率化にならないため、本番でどのくらいの精度で変換できるのかがとても不安でした。
実際の放送での成果を教えてください。
「Video OCRシステム」を最初に導入したAbemaTVで配信した「全英オープン」で100%の精度で選手名変換を実現したことで、無人で30時間を超えるインターネット配信に大きく貢献し、変換速度も従来のおよそ1/3へ短縮されました。2回目の”ZOZO CHAMPIONSHIP”では地上波でも初めて使用し、日本語テロップスタッフの一助になり、こちらも30時間を超える大活躍でした。
社内の皆さまからの反響はありましたでしょうか。
2019年9月に行なわれた社内展示会やスポーツ局の社内会議でこの事例を紹介したことで、取り組みは幅広く社内周知ができました。社内に周知ができたことで、画像認識やOCRの技術をこんなところにも使うことができないか?と様々な声が挙がってきています。
また、プロジェクトに携わっていたメンバーからは、喜びの声があがっています。特に、操作の簡易性や、精度の高さ、処理速度の速さが社内では評価されているポイントです。過去2回のゴルフ中継で利用したことを伝えると、他のスポーツ番組担当者から興味を示す声があがりました。
OCRにとどまらずAIを活用した新たな取組みが一緒できるとしたら、どんなことに活用できるか教えてください。
どの選手が映像に写っているのかどうか、服装や顔、動きなど様々な要素からAIが自動判別できたらとても面白いですね。リアルタイムで選手の特徴を学習することができれば、選手名や付加情報についても自動化できると思います。選手が帽子を被っているため顔が見えにくいゴルフでそれが可能となれば、他のスポーツでも汎用的に使えるはずです。今はテロップを出すにもまずは人が「この選手が誰なのか?」を見分けているので、そこが自動化できるとさらなる省力化につながると思います。
今後の活用展望をお聞かせください。
「Video OCRシステム」の活用を通じてAI-OCRでの業務効率化は社内で話題になっているため、ゴルフ中継にとどまらず東京オリンピックのさまざまな競技の中継で活用していきたいですね。