導入事例

2021.01.04
KDDI株式会社

“まずはできる範囲から”AI-OCR×RPA活用で見えたDXの本質

KDDI株式会社
  • 会社名
    KDDI株式会社
  • 業界
    その他
対象帳票
見積書
before
  • 毎月数万件の見積もり業務に大きな負荷がかかっていた
after
  • クオリティを維持しつつ、約17%の業務時間削減を実現

日本を代表する電気通信事業者であるKDDI株式会社。毎月数万件の伝票が発生する発注業務では膨大なリソースが割かれており、システムによる効率化が急務でした。そうした背景でAI-OCRとRPAを導入した結果、どのような効果があったのか、お話を伺いました。

購買部が担当する発注は毎月数万件

松本さま:私たちが所属する購買本部は、KDDIにおけるほぼ全ての物品、サービスの調達、購入に関する業務を担当しています。その中でPI推進部では、購買業務全体の効率化を進めることをミッションとしています。弊社は通信業としてスタートしていますが、最近ではライフデザインと呼ばれている金融やサービスといった、さまざまな分野の事業を手掛けています。そのため、発注の規模が大きいだけでなく、領域も幅広いものとなりました。それに伴い帳票の数も増え、煩雑になってきているのが現状です。

小久保さま:購買担当の本来の業務である、値段交渉や適正な価格を査定したりと、よりよい条件で購買を行なうことに集中してもらうため、購買本部の中でも業務を分担しています。PI推進部のオペレーショングループでは、購買本部の中で発注処理のすべてを一手に集約して請け負っています。

濱口さま:基本的にすべての案件は購買本部を通じて購入されているので、具体的な数字は出せませんが、その額は何兆円の世界です。品目数はおよそ6,000ほどあり、スマートフォンの端末から無線、オフィスで使う物品、コールセンター、ショップスタッフのユニフォーム、販促用に配布するノベルティ、無形物ではCMまで対象になってきます。

増加する業務量への対応とクオリティ維持が課題

濱口さま:とにかく発注量が多く、業務を少しでも効率化したかったことに尽きます。特に近年では業務領域の拡大により、発注量が爆発的に伸びていました。一件一件の案件チェックから処理まで、現状のメンバーだけで対応する必要があり、とにかく工数がかかっていました。人員が増えない以上、業務フローをシステムに置き換えて効率化するしか方法がありません。しかし単に効率的な処理だけではなく、ミスがないかダブルチェックを行なったり、その購買が本当に最適な条件のものであるかも精査しなければなりません。増えていく業務量に対応しながら、その業務のクオリティを維持していくことが、課題となっていました。

業務全体の自動化への近道はAI-OCRとRPAの組み合わせ

小久保さま:AI-OCRより先に、RPAの導入を進めていました。しかし、業務全体を効率化するには、決まった動きを自動化させるRPAの機能だけでは不十分でした。その後、RPAのセミナーや展示会に足を運ぶ中でAI-OCRの技術を知り、AI-OCRとRPAを組み合わせることで、日々発生する帳票の情報を読み込んでシステム上でチェックできないかと検討をし始めました。

UIの簡単さとわかりやすさが内製化の鍵

濱口さま:DX Suite は展示会やインターネットでの検索で初めて知りました。国内でのシェア率や導入企業数から、5〜6社の製品を比較検討し、2019年12月にプロジェクトを立ち上げ、4ヶ月後の年度末までにOCRの検証、トライアル完了を目標としました。製品の比較項目は、読取精度、価格、UI、サポート体制、RPA連携が可能かどうかの5つです。DX Suite はすべてクリアしており、1ヶ月のトライアル(Success Program)で印象に残っているのは、使いやすいUIでしたね。特に、帳票の定義設定と種類ごとに仕分けができる機能(Elastic Sorter)は、シンプルで使いやすいと感じました。直感的に操作でき、非常に分かりやすい製品で、簡単にチューニングができる点は内製化向きだと思います。また、弊社ではRPAにUiPathを使用しており、DX Suite とAPI連携ができることも良かったですね。

すべてに導入しようとするのではなく、できる範囲で始めること

濱口さま:いきなりすべての帳票にDX Suite を使うと設定に膨大な時間がかかってしまうため、発注数が多い会社の帳票から順番に導入しています。業務の具体的な流れとしては、各部門からシステムに上がってくる購買依頼の申請に対して、購買担当が内容を確認します。その申請データに見積書がPDFで添付されているのでそれをDX Suite でデータ化した後に、RPAで申請内容と見積書を突合させてOKであれば承認をするというフローになっています。読取箇所は、仕入れ先名や金額、税区分など、突合に必要な項目をすべて定義し、取得できるようにしています。

現在はAI-OCRとRPAを通して出てきた結果に対して、以下の3つに分けて処理をしています。③に関してはもっと多い想定だったので、意外と少なく驚きました。
① 人がチェックする必要がないもの(30%)
② 一部チェックする必要があるもの(40%)
③ 枠からはみ出したものなど、AI-OCRで読み取れず完全に人がチェックする必要があるもの(30%)

購買部内でAI-OCRを水平展開し、さらなる効率化を

濱口さま:オペレーショングループで扱っているソリューション発注業務では、毎月100時間ほどかかっていました。それが現時点で約17時間ほど削減ができているので、17%の業務効率化ができています。AI-OCRの活用は社内でも注目されており、他部署から問い合わせやグループ会社からの相談も届くようになりました。購買本部全体の業務効率化を目指し、次は取引先と交渉する部署での活用を検討しています。また、今後は読み取った見積もりデータを集約してデータベース化することもできればよいと考えています。そうすれば、過去の取引記録をすぐに参照することができ、バイヤーの価格交渉がよりスムーズになるはずです。

松本さま:現在は購買部が抱えている業務の中でもなるべくシンプルな発注業務を中心にAI-OCRを導入し、効率化することができました。非定型帳票の対応フォーマットが増えれば、活用の幅はもっと広がると思います。

「DX」とは"機械化すること"ではなく、業務全体を見直すこと

小久保さま:AI-OCRやRPAといったシステムに業務を合わせていくことは敷居が高いと感じると思います。しかし、やってみたら意外とできてしまうというのは、我々も大きな気づきでした。最近ではよく「DX」という言葉がよく使われますが、ただ業務をシステムに置き換えることではありません。単に機械化するのではなく、業務フロー全体を見直し、変えていくことが大事なのだと思います。

さぁ、データ活用を始めよう。
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