導入事例
年間で6万時間弱の事務作業を削減!日本通運が全国93拠点にDX Suite(Intelligent OCR) を浸透させたウラ側に迫る
- 会社名日本通運株式会社
- 業界物流
- URL
- 1拠点あたり毎月平均450件の帳票を手入力でデータ化していた
- データ化をアウトソーシングしたものの、スピード感に課題
- 年間で6万時間弱の事務作業を削減!
- 現場の拠点では、業務効率化を念頭に置いた意識の変化が
連結売上高で2兆円を超える事業規模をほこる日本通運株式会社(2021年4月1日現在)。世界的なネットワークを武器に物流事業を手掛ける同社では、日本各地の物流を担う拠点の事務作業を効率化・自動化するため、DX Suite を導入しています。導入までの流れ、全国の拠点にDX Suite を浸透させるための施策、そして導入後の成果についてお話を伺いました。
IT中期経営計画に掲げられた「年間100万時間の削減」と、同社が抱える課題とは
ーー 業務内容をお聞かせください。
井上さま:弊社のIT推進部では、主に社内向け業務システムの開発・保守を担っています。業務システムごとにグループが分かれており、RPAプロジェクトでは全社の定型業務を主にロボット(RPA)とAI-OCRによって省力化していくことがミッションです。
ーー RPAプロジェクトを立ち上げられた背景をお聞かせください。
井上さま:RPAプロジェクトは2018年3月に立ち上げられました。慢性的な労働力の不足と高年齢化が経営的な課題に上がったことが立ち上げの背景にあります。国内にある営業拠点では、人手が足りずに目の前の日常業務でいっぱいになってしまい、これ以上の効率化と成長は見込めませんでした。
そこで人がやらなくていいルーティン業務をできるだけRPAで自動化し、そこから浮いた時間を営業活動やマーケティング活動、企画業務、分析業務など、本来人がもっと注力すべき業務に割り振っていくことで、全社の生産性を向上させようと考えました。
ーー RPAプロジェクトでAI-OCRの導入を検討し始めた、背景をお聞かせください。
井上さま:RPAは基本的に処理するインプットデータがデジタルデータ化されていることが前提になります。RPAプロジェクトでも「お客様から届いた紙やFAXによる帳票の処理を、RPAで省力化したい」という相談を各方面からもらっていたものの、紙を自動でデータ化できないことからお断りしていました。
お断りすることを申し訳なく感じながらも「いつか紙やFAXをデータ化したい」と感じていた頃、経営層から「定型業務に費やしている時間を100万時間削減する」という目標が掲げられました。この目標を達成するためには自動化できる領域を増やす必要があるため、AI-OCRの導入を本格的に検討することになったのです。
1拠点あたり、毎月平均で450件の帳票を手入力でデータ化していた
ーー 全国の拠点では、紙の帳票に関してどのような課題があったのでしょうか。
井上さま:トラックドライバーから提出される紙の運転日報と、アルバイトから提出される紙のアルバイト勤務日報を、全国の拠点に在籍する事務系社員が、Excelに入力するという業務を行っていました。入力されたExcelはRPAで社内システムに転記され、実績完了登録が自動で行われます。その後支払い賃金がシステム上で自動算定されます。
これら紙の帳票は、現場でトラックドライバーやアルバイト自身が手書きで記入し、毎日1人1枚ずつ事務系社員に手渡ししています。受け取った事務系社員が一枚一枚を目視で確認し「今日は何時から何時まで勤務したか」「どのような業務内容を行ったか」をExcelに手入力していたのです。
この煩雑な業務に現場が課題を感じ、Excelに入力する作業をどうにか効率化できないかという要望が各拠点から上がっていました。
ーー それぞれの帳票の件数を教えてください。
銀岡さま:AI-OCRの導入を検討するにあたっては、各拠点でどのような帳票を取り扱っているか、その帳票の枚数、そしてAI-OCRのニーズがあるかどうかを調査しています。
トラックドライバーから提出される運転日報は、平均して1拠点あたり毎月およそ300件でした。最も件数が多い拠点で、毎月およそ5,000件も処理しています。
一方、アルバイトから提出されるアルバイト勤務日報は、平均して1拠点あたり毎月およそ150件です。こちらで最も件数が多い拠点では、毎月およそ5,400件を処理しています。
井上さま:アルバイト勤務日報は、アルバイト管理の業務システムから全国統一の様式で出力される帳票だったので、AI-OCRによる自動読取と相性がよいはずだと考えました。
しかし、運転日報の様式はバラバラでした。例えば、引っ越し業務と現金輸送業務では、業務の内容も1件あたりの時間も変わってきます。拠点の中ではある程度フォーマットはあったものの、業務ごとに異なる様式だったのです。
紙のデータ化を委託型からセルフ型へ。現場が使うからこそ「使いやすさ」を重視
ーー DX Suite の導入以前の取り組みについてお聞かせください。
銀岡さま:以前はパートナー企業さんに帳票をデータ化してもらう、アウトソーシングによる効率化に取り組んでいました。弊社ではこれを「委託型」と呼んでいます。一方、AI-OCRを活用し、自分たちでデータ化する方法が「セルフ型」です。
この委託型による自動化の取り組みは、納品までに日数が掛かってしまうことから、全国の拠点には広がりませんでした。運転日報は、月末の締め作業に関わってくるデータであるため、作業の発生から2営業日以内にはデータ化する必要があったのです。業務時間によっては、トラックドライバーさんからの運転日報の受け取りが作業翌日になることもあり、データ化に1営業日掛かってしまうと締め作業に間に合いません。
また、委託型はAI-OCRの誤読による修正作業等も委託することになる為、セルフ型と比べてコストと導入までの時間が掛かってしまうことも課題でした。
ーー DX Suite をお知りになったきっかけをお聞かせください。
銀岡さま:委託型でお願いしていたパートナー企業さんが、DX Suite を使用していたことを聞き、私たちのグループ企業でIT事業を担うNX情報システム株式会社(以下、NX情報システム)を通じてご紹介いただきました。
ーー 他社のAI-OCRとは比較検討しましたか。また、その際の評価軸をお聞かせください。
銀岡さま:DX Suite を含め、3社のツールと比較検討しました。その際に最も重視した評価軸は「現場ユーザが使いやすいこと」でした。3社トライアルを実施して同じ帳票を読み取り、現場に導入した際の業務を確認しました。
DX Suite を触った感想として、直感的に操作できるインターフェースがとても優れているなと判断し、導入を決定しました。
ーー ツール導入の社内合意形成や稟議を通すために工夫されたことはありますか。
井上さま:ツール導入の規模が大きいため、細かく費用対効果まで計算するのは簡単ではありませんでした。しかし、全国の拠点にAI-OCRのニーズがあるか、自動でデータ化したい帳票が全国の拠点に何枚あるか、といった調査を事前に行ない、ニーズを確認できていたため説得材料には充分だったと思います。
その結果、無事にDX Suite の導入が決まり、2020年8月から一部の拠点で試験導入しました。その後研修や業務フローの確認を進め、2020年10月に希望する拠点への本導入を開始しました。
マニュアルに動画、キャンペーンも!DX Suite を社内に浸透させた施策とは
ーー 弊社からの導入サポートに対するご感想をお聞かせください。
銀岡さま:セルフ型のAI-OCRは、現場にとってゼロからのスタートでしたので、現場へどう浸透させるかが課題でした。
他社のツールであれば、導入時にIT推進部だけで説明会を開催するのですが、今回はAI inside 社のカスタマーサクセスに同席いただけたことが印象的です。その場でデモンストレーションもしていただき、すごく助かりました。やはり、ツールのことを一番理解している方からの説明は説得力がありますので、現場への浸透にとても効果的でした。
年換算で6万時間弱の事務作業を削減!入力ミスが減り、拠点では意識の変化も
ーー 各拠点のご担当者の方からはどのようなご感想がありましたか。
銀岡さま:最初は「自分たちでやらなきゃいけないのは大変だな」と感じていたそうですが「2, 3日ほど触ればすぐに使い勝手が分かった」という感想が大半です。私たちが想定していたよりも、慣れるまでの期間が本当に短かったと思います。比較検討の際に、現場ユーザに優しいツールを選定して正解でした。
井上さま:デザインがシンプルで見やすいだけでなく、必要な操作がほぼ一画面に収まっていることが嬉しいですね。無駄に画面遷移をする必要がなく、分かりやすいです。
また、マニュアルを作成していて感じたのですが、操作に必要なボタンが少ないため、直感的にボタンをクリックするだけで操作が完了することも高く評価できると思います。
ーー DX Suite 導入によって、どのような成果が得られましたか。
井上さま:現在、全国で93の拠点にDX Suite を導入しており、年換算で6万時間弱を削減できている計算です。この数値は、実際に読み取られた1リクエストあたり10秒を削減できたと仮定して算出しています。なお、これまで読み取った項目数では、月間最大で176万リクエストです。
これらの数値は役員に月次で報告しており「さらに推進してほしい」とのコメントをもらっています。
銀岡さま:DX Suite の導入で現場の入力ミスがほぼなくなったと聞いています。ミスがないか確認する業務からも解放されたことによって精神的な余裕が生まれています。また、走り書きの文字を一つひとつ解読して入力するストレスからも開放されたという声もありました。
ーー DX Suite 導入で、社内に変化はありましたか。
銀岡さま:DX Suite の導入をきっかけに、事務作業のどこに無駄があるのかを検証することができました。例えば、意識せずにこれまで使ってきた帳票の項目を改めて見直し、必要な項目数だけに絞ることができたり、自由記入欄を選択式に変更したりと、新しい日報のフォーマットが出来上がりました。
また、以前は輸送手段や業務ごとにバラバラであった運転日報を改めて見直した結果、同じフォーマットの日報に統一できることが分かったことも、大きな現場意識の変化だと思います。
DX Suite の導入をきっかけに業務フローの見直しをできたことは業務改善に大きな意味があったと思います。
ツールを導入することが目的ではない。現場に浸透し、効率化することがゴール
ーー 今後の展望をお聞かせください。
井上さま:弊社の業務でDX Suite が活躍できる余地はまだまだあります。個人的な感覚値ですが、現在の全社的な浸透度は全体の10%ほどだと感じています。
銀岡さま:現在DX Suite を導入している帳票は主にアルバイト勤務日報と運転日報ですが、その他の帳票にも拡大していきたいですね。
ーー AI-OCRの導入を検討されている企業へアドバイスをお願いします。
井上さま:どのツールにも言えることではありますが、導入することがゴールではありません。社内に浸透させること、そしてより広く業務を効率化させることが大事です。だからこそ、ユーザに優しく、使いやすいツールを選定することが大前提になります。
全国に置かれている弊社の拠点一つひとつを見ても、けっしてITリテラシーが高いわけではありません。そうしたまだまだアナログな現場でも、DX Suite はしっかり活用できるツールであると言えるのではないでしょうか。