コラム

公開日:2022.08.31
更新日:2022.08.31

AI-OCRとは?OCRとの違いとメリット、活用事例を解説

AI-OCRとは?OCRとの違いとメリット、活用事例を解説

紙帳票のデジタル化の手法としてOCRという技術が採用されてきましたが、これをさらに発展させたAI-OCRが登場しました。しかし、AI-OCRについて知らない方も多く「AI-OCRとはそもそも何か?」「どんな点が、従来のOCRとの異なるのか?」などの疑問も聞かれます。

そこでこの記事では、AI-OCRの特徴、従来のOCRとの違い、メリットや活用事例を紹介します。帳票のデジタル化をスムーズに進めたいと思っている方は、ぜひ最後までお読みください。

AI-OCRとは

AI-OCRとは、紙媒体の情報を読み取るOCR技術にAIを組み込んだ技術を指します。まずはAI-OCRがどのような性能を持っており、OCRからどのような進化をしてきたか確認していきましょう。

AI-OCRの特徴と歴史

AI-OCRは、AIの技術を利用して、紙の文字情報を読み取る技術を指します。

従来、FAXで受け取った注文書や、手書きの申込書などの紙の情報は、人間が手入力でデジタル化する方法が一般的でした。

しかし、手入力の作業は入力するデータ量に比例して、作業にかかる人的コストや作業時間が増加してしまいます。また、それに伴って、入力間違いなどのヒューマンエラーが増加してしまいます。

このような問題を解決するために、利用されていたのがOCR(Optical Character Recognition)の技術です。OCRを利用することで、紙に記載された文字をスキャナーが読み込んで認識し、画像データに変換、テキストデータとして抽出することができました。

このOCRの技術の発展によって、手入力の作業を必要とせずに紙の文字情報をテキストデータに起こすことが可能になりました。

そして、2020年代の現在では、OCRの技術にAIの技術を加えることで、文字の読取精度を向上させたAI-OCRが登場し、多くの企業に導入されています。

AI-OCRとOCRの違い

AI-OCRはOCRとAIが融合した技術です。従来のOCRよりも読取精度や作業効率面で、機能が向上しています。ここでは、具体的にAI-OCRとOCRでどのような違いがあるか確認していきましょう。

AI-OCRは文字をより正確に認識できる

従来のOCRの欠点として、決まったパターンの文字しか認識できないという点がありました。

それに対してAI-OCRは、AIがさまざまなパターンの文字を学習することで、読取精度が大幅に向上し、手書き文字にも対応できるようになりました。また、訂正印が押されている文字は読み飛ばしたり、枠からはみ出した文字でも認識することができます。

AI-OCRは手書き文字の認識率が高い

前述した通り、従来のOCRで手書き文字の認識を行うと、誤って読み取られてしてしまう場合がほとんどでした。手書き文字は個人個人の筆跡や癖などがあるため、それらを認識することが難しいというのが原因です。

しかし、AI-OCRはディープラーニングによって、さまざまな筆跡パターンを学習し、手書きによる乱筆文字や斜めに記入された文字列、枠外にはみ出した文字の認識もできるようになりました。100%正確に読み取れるというわけではありませんが、かなりの高精度を誇るAI-OCRもあります。

AI-OCRは非定型の帳票にも対応している

従来のOCRでは、フォーマットの種類が多い非定型の帳票の読み取りは非現実的でした。読み取り項目の設定を、帳票の種類ごとに行う必要があるため、帳票の種類が増えるとその分設定作業も増えてしまうからです。

AI-OCRのツールの中には、帳票の読み取りたい項目の位置をAIが自動で抽出する機能を搭載しているものもあります。そのため、従来のOCRで必要だった読み取り箇所の設定をすることなく、フォーマットの異なる非定型の帳票を読み取ることが可能です。

AI-OCRを導入するメリット

AI-OCRはOCRよりも性能が向上しており、実用性が増しています。では、実際にAI-OCRを導入するメリットはどのような点にあるのでしょうか。ここでは、AI-OCR導入のメリットを3つの観点から解説します。

入力作業が効率化し、業務コストが削減できる

AI-OCR導入のいちばんのメリットは、入力作業にかかる時間やコストが削減できることです。文字をスキャンし、AI-OCRにアップロードするだけでテキストデータが作成できるため、入力の作業を効率的に行うことができます。

例えば、仕入元企業名や商品名、数量、金額などの情報が書いてある納品書の場合、AI-OCRを使えば読み取りたい要素を区別し、自動抽出ができます。

項目数が10個程度であれば、デジタル化までの時間は帳票1枚あたり数秒から十数秒程度で完了します。ただし、クラウドサービス型のAI-OCRを利用する場合は、インターネットの通信速度やファイルサイズの影響を受け、必要な時間が前後するため注意が必要です。

確認作業や修正業務が軽減される

従来のOCRは文字の認識精度が低く、文字の読み取り後も大幅な修正が前提で、確認・修正業務が必須でした。その結果、OCRを利用することで、かえって業務量が増えてしまうこともありました。

しかし、AI-OCRは文字の読取精度が非常に高いため、デジタル化された文字の確認・修正作業が大幅に軽減されることで、入力業務の効率化を図ることができます。

データの活用が行いやすくなる

AI-OCRを利用して、紙帳票をデジタル化することで、データの活用ができるようになります。

例えば、デジタル化したことにより検索性が増し、アクセスしたいデータに早くアクセスすることができるようになります。また、リモートワークなどで物理的に離れた場所にいる社員にも簡単にデータの共有を行うことができます。

AI-OCRの導入時の注意点

AI-OCRを導入するメリットをお伝えしましたが、入念な検討をせずに導入すると、思ったような効果を発揮できない可能性もあります。そのため、導入の是非は、メリットと注意点を比較した上で決定する必要があります。

ここからはAI-OCRを導入する上での注意点について解説します。

導入時に費用コストがかかる

AI-OCRの導入には、当然ながらコストがかかります。初期費用に加えて、月額料金や従量課金制による定額費用が発生します。

もちろん、AI-OCRを導入することで業務効率化は図れますが、入力業務の量に対してコストの高すぎる製品を導入してしまうと、費用対効果が合わない可能性もあります。

このため、AI-OCRを導入する場合には、事前にシミュレーションやトライアル導入をしっかりと行い、どれくらいのコストが削減できそうかを計算した上で、費用対効果の合う製品を選定しましょう。

文字認識率が100%ではない

従来のOCRに比べて、文字の読取精度が劇的に向上したAI-OCRですが、100%の読取精度があるわけではありません。今後も認識精度が向上する可能性は高いものの、すべての手書き文字に対応することは難しいため、 どうしても100%の精度を実現することは難しいでしょう。そのため、人間の目による確認や修正作業は一定数必要です。

しかし、「目視の確認作業が必要なら、AI-OCRを導入する意味がない」というわけではありません。従来、手作業で行っていた文字の入力の作業はAI-OCRで行い、人間は目視の確認作業のみに集中できるため、手書き文字などのデジタル化にかかる時間を大幅に削減することが可能となります。

製品によっては対応しづらいフォーマットがある

AI-OCRは非定型の帳票にも対応しているものの、製品によっては非定型への対応が難しい場合もあります。もしも、非定型のフォーマットに対応していない製品の場合は、書類の形式によっては読取精度が下がってしまう可能性があります。

そのため、非定型のフォーマットを取り扱うことが多い場合は、導入を検討している製品が、どれだけ非定型フォーマットに対応しているかどうかの確認が必要です。

また、特定の業種や帳票に特化しているなど、製品ごとの特色が大きく異なるため、性能を見極めながら自社に最適な製品選びを行ってください。

AI-OCRをの導入し業務が効率化した事例

ここからは、AI-OCRを実際に導入している企業や店舗の事例をご紹介します。

外食・中食業での活用事例

全国3,900カ所の施設に一日1,300,000食を提供しているエームサービス株式会社様でのAI-OCR活用事例です。

同社では以前、納品伝票や売上集計表を訪問の際に回収し、直接手入力で作業していました。しかし、入力作業に要する時間が1週間も必要だったため、「時間コストを削減したい」と考えたのが、AI-OCR導入のきっかけでした。

課題解決のため、同企業では納品伝票のオンライン化を進めましたが、それでも改善の余地が多々あったため、AI-OCRを導入することとなりました。

導入前のトライアルでは、読取精度が90%以上あり、操作性もよかったため、AI-OCRの導入に至りました。

導入後は業務時間を90%も削減でき、入力担当者は本来の業務に集中できるようになったとのことでした。

参考:DX Suite を利用し、1日約300枚の書類のデータ化を実現!

地方公共団体での活用事例

続いては、近江八幡市役所様でのAI-OCR活用事例です。

同自治体には、他の自治体と同じように職員の人手不足という課題がありました。そこで、機械に任せられる業務は機械に任せ、職員は職員にしかできない業務に取り組ませるとの方針を推進することにしたのです。

そんな方針に従って導入されたのがAI-OCRでした。実際に導入をした人権・市民生活課の例を見てみましょう。

同課では、意識調査の回答用紙を回収し、1,200枚ほどの用紙を手入力でデータ化していましたが、入力に時間がかかり、土日にも業務や残業が発生していました。

ところがAI-OCR導入後は、わずか10分の隙間時間にデータ化が完了し、職員は人にしかできない業務に注力できるようになったのです。

参考:10分の隙間時間にデータ化が完了!AI-OCRを活用した誰一人取り残さないためのDX

運輸サービス・建築業での活用事例

工場建設、構内の操業支援や原料製品の物流などを行っている山九株式会社様でのAI-OCR活用事例です。

同社では、点検記録、作業日報などの情報を手入力でデジタル化するか、紙の資料のまま保管していました。しかし、担当者の負担が大きく、入力業務をデジタル化してほしいとの声があがっていました。

もともと他社のOCRを導入していましたが、読み取り精度が低く、帳票設定も難しいため、うまく活用できていませんでした。

そこで、さらに効果を発揮するためにAI-OCRの導入を決定します。AI-OCRは、読取精度が高く、帳票設定も行いやすく、点検記録、作業日報、請求書、出勤簿すべて合わせて、月間約400時間の業務時間削減に成功しました。

参考:月間約400時間の削減。アナログ情報をデータ化し業務分析に活用

製造業での活用事例

電子部品や機器、環境改善・生産支援製品などを行っているJOHNAN株式会社様でのAI-OCR導入事例です。

同社の主な業務として、製品やサービスの新しいデザインの創出がありましたが、目の前の業務や日々のルーティン業務に追われ、集中できないという悩みを抱えていました。

そこで、バックオフィスの業務の自動化・省力化を検討し、OCRの導入を考えましたが、読み取り精度が低く、コストに見合わないとのことで断念。そんな折にAI-OCRを知り、トライアルの結果、導入となりました。

当初、注文書の入力業務に年間232時間も費やしていたそうですが、AI-OCR導入後は確認作業だけになり、年間約84%の業務時間の削減に成功。繁忙期の残業も少なくなりました。

参考:注文書の入力業務時間が約84%削減。二名体制から始まったDX推進のポイント

保険業での活用事例

続いて、自賠責保険の業務を受託しているMS&AD事務サービス株式会社
様でのAI-OCR活用事例です。

同社では、自賠責保険に関する申請書類の処理を行っています。以前は、年間で1,040,000件もの紙中心の申請書類を処理していたそうです。繁忙期には追加人員の投入や、残業で何とか対応していました。

そこで注目したのがAI-OCRです。自賠責保険関連の書類は似たようなフォーマットが多く、入力項目も限られているため、「AI-OCR導入で、業務の効率化が図れるのでは」と考えたのがきっかけです。

実際にAI-OCRの導入とEnd to Endの業務フローの見直しで、年間40,000時間を削減しました。業務の分割化もうまくいき、在宅勤務も可能となりました。

参考:AI-OCRの活用で年間40,000時間の業務削減に成功

不動産業での活用事例

賃貸住宅・分譲住宅の管理を行っている日本総合住生活株式会社様でのAI-OCR活用事例です。

同社では、毎年年末調整の時期に派遣会社からスタッフを呼んで、従業員8,000人分のデータ入力を依頼していました。ところが、昨今の人材不足の影響から、スタッフが派遣されない年が出たのです。

そのため、入力業務ができなくなり、OCRの導入に踏み切りました。しかし、最初に導入した製品では、濁音が読めないなど読取精度が低く、スキャンも大変だったといいます。

そこで、AI-OCRの導入に至りました。結果として、新たな人材を採用することなく、自社内で入力業務が完結できるようになりました。

参考:DX Suite の全社展開を目指し、現場と二人三脚でデジタル化を進めるその秘訣とは

AI-OCRについてよくある質問

AI-OCRについて解説してきましたが、まだわからない点や疑問点があるかもしれません。そのためここでは、AI-OCRについてよくある質問をまとめています。

AI-OCRが「使えない」と言われる理由は?

AI-OCRが「使えない」「使いづらい」という声がときどきあがります。確かに、一昔前は使いづらい製品も多かったです。特にAI機能のないOCRが主流の時代には、実際の事務処理の現場や実務で役に立たない場合もありました。

しかしAIの導入により、昨今は技術が進歩しています。AI-OCR自体も以前より精度が向上し、使いやすくなった製品も数多く販売されています。

AI-OCRの導入は何から検討すればいい?

AI-OCRの導入にあたっては、まず目的を明確化しましょう。目的によって、かかる費用、効果、選別すべき製品が変わってきます。

具体的な目的としては次のようなものがあります。

・エクセルへの手入力にかかる時間の削減

・請求書などの帳票のデジタル化にかかる作業時間の軽減

・アンケートなどのデジタル化にかかる時間の軽減

・基幹システムへのデータの手入力にかかる時間の削減

特定の帳票に特化したAI-OCRの製品もあるため、目的を明確にすることで、実務にあった製品を選択しやすくなります。

AI-OCRの費用はどれくらい?

AI-OCRにはさまざまな製品があり、費用はそれぞれ異なっています。費用には初期費用、ランニングコスト、オプション料金、サポート料金などが含まれ、製品ごとに大きく異なるため、一概にいくらとは言えません。

安いものでは、月額料金が10,000円という製品もありますが、安ければいいというものではなく、プランや機能についても詳細をチェックする必要があります。

ただ、どのくらいの費用をかければいいのかは、分からないことも多いですから、お試しプランを利用したり、提供元に相談することで決めることが一般的です。

AI-OCRを活用して帳票のデジタル化を進めましょう

この記事では、AI-OCRの特徴、導入のメリットや注意点、活用事例を紹介しました。AI-OCRは従来のOCRを上回る技術であり、文字認識の精度が上がり、手書き文字の読取精度も向上しています。そのため、紙帳票のデジタル化にかかるコストや時間が大幅に削減できることでしょう。

AI inside 株式会社では、だれでも簡単に使える高精度のAI-OCR「DX Suite」を提供しています。AI-OCRの導入を検討されている企業様は、 ぜひお問い合わせください。

さぁ、データ活用を始めよう。
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